損害保険料率算出機構
専攻を活かせる
- 数学・物理系
- 建築・土木・都市工学系
- 環境・資源系
- 経済・経営工学系
- その他理系
数理・工学・ITスキルを活かし、損害保険を通じ人々の生活を支える
企業活動や社会生活のあらゆるリスクをカバーする損害保険。その損害保険を中立・公正な非営利の立場から支えているのが、損害保険料率算出機構(以下:損保料率機構)である。同団体は、「保険契約者等の利益を守り、損害保険業の健全な発達に寄与する」という社会的な使命を果たすため、主に3つの業務に取り組んでいる。
『料率算出』では、会員保険会社等から収集した大量のデータをもとに科学的・工学的手法や保険数理などの合理的な手法を用いて、自動車保険・火災保険・傷害保険などの参考純率および自賠責保険・地震保険の基準料率を算出し、会員保険会社に提供している。『損害調査』では、自賠責保険(共済)の損害調査(傷害等による損害と事故との間に因果関係があるかどうか、後遺障害がどの等級に該当するか等)を行い、その結果を保険会社等に報告している。『データバンク』では、保険に関する数多くのデータを収集・整備して料率算出や保険統計の作成に活用するとともに、様々なリスクの分析・研究も行っている。
損保料率機構では、精度の高い統計に基づく適正な参考純率と基準料率を算出し、金融庁や会員保険会社に説明できるアクチュアリー正会員を筆頭に多くの理系人材が活躍している。大量のデータを使用した統計表の作成・公表や各種調査・研究活動では、数学や統計・工学的知識、プログラミングやデータ分析のスキルが活かされており、社内インフラ(情報システム部)領域でも、ITスキルを有した理系人材を歓迎している。


損害保険料率算出機構の募集情報
損害保険料率算出機構のイベント情報
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被害予測シミュレーションで地震リスクを評価 保険や技術の変化を追い、モデルの改善を続ける
- 桑原 光平くわばら・こうへい
- リスク業務部 地震リスクモデル開発グループ
- 東京工業大学大学院 環境・社会理工学院 建築学系 都市・環境学コース 修了
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入社を決めた理由を教えてください
大学院では、機械学習(AI)を用いて日本全国の液状化危険度や地盤の揺れやすさを評価する研究に取り組んでいました。就職活動では、この地震工学や広域リスク評価といった専門性を直接活かせる道を模索し、大手ゼネコンの技術研究部門などを検討。その中で、指導教官から損害保険料率算出機構のことを教えてもらいました。
当機構は、日本全国を対象に地震のリスク評価を行い、地震保険の料率を算出している組織です。自分の研究テーマと驚くほど一致しており、ここでなら専門性を最大限に発揮できると確信しました。特に各保険会社が共通で使う家計分野の地震保険料率については、日本で当機構だけが算出している点に公共性と社会的意義を感じ、入社を決意しました。 -
地震リスクモデル開発の仕事内容を教えてください
リスク業務部の地震リスクモデル開発グループに所属し、地震保険の基準料率を算出するためのシミュレーションモデルの開発や、関連する調査・研究を担当しています。地震リスクの中でも、特に地震火災や液状化が私の担当分野です。
地震は火災や自動車事故と比べて発生頻度が低く、データが少ない一方で、一度発生すれば被害は甚大になり得ます。世の中に存在するデータだけではリスクを正確に評価することが難しいため、私たちはコンピュータ上で仮想の地震を発生させ、現在の地震保険契約に生じる損害を予測する被害予測シミュレーションを用いて、科学的な根拠に基づいた保険料率を算出しています。
シミュレーションにおいては、地震の波形データや日本全国の地形データ、さらには国勢調査や経済動向調査といったオープンデータから保険実績データまで、多種多様な情報を組み合わせた上でモデルを開発していますが、統計だけでは補えない部分については工学的な知見も駆使し、より精度の高いモデルの構築に日々取り組んでいます。 -
印象に残っている業務を教えてください
私自身が提案して立ち上げた研究プロジェクトをきっかけに、シミュレーション手法の入れ替えを担当しました。このプロジェクトでは、地震による被害の実態をより正確にリスクモデルに反映させ、より適切な保険料率を算出することが目的でした。
ですが、シミュレーション手法を入れ替えるのはそう簡単なことではありません。地震保険はシミュレーションベースで保険料率を定めているため、手法を変えると保険料率が大きく変動する可能性もあるからです。大きな地震が起きていないにも関わらず保険料が上がると、いくら理論的に正しいとしても、契約者の方々の不安や不信感につながってしまいます。
変動について説明責任を果たせるよう、仮説と検証を繰り返し、専門家にもヒアリングしながら丁寧な分析を突き詰めました。自分たちの業務の影響力の大きさ、社会的責任の重さを実感した出来事です。 -
理系で学んだことがどのように活かせていますか
大学で学んだ地震に関する知識や、PythonやFortranといったプログラミング言語を用いて研究を行っていた経験は、現在の業務にそのまま活きています。しかし、それ以上に役立っているのは、研究を通じて培ったプロセスや思考法です。仮説を立て、検証し、結果を考察するという一連の流れは、まさに今の仕事と同じです。理系の基礎的な能力こそが、私たちの仕事の根幹を支えています。実際、今の部署では数学や物理学など多様なバックグラウンドを持つ先輩職員たちが、それぞれの素養を活かして活躍しています。地震の専門知識があるかどうかよりも、理系としての経験の蓄積の方が重要だと感じています。
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損害保険料率算出機構で働く魅力は
自分たちの仕事が「社会のインフラを支えている」という実感を得られることです。私たちが算出した料率が、日本全国の地震保険の基準となるという責任は大きいですが、同時に他では味わえない大きなやりがいを感じます。また、私の現在の業務は、新しいことに挑戦する研究的な側面と研究成果をシミュレーションモデルに組み込む実務的な側面の両方があり、それぞれの面白さを味わえます。私自身も、働きながら社会人博士課程に通い、会社から支援を受けて研究を続けています。地震分野での博士号を取得できたら、その専門性を活かし、機構や社会により貢献していきたいと考えています。
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理系学生へのメッセージをお願いします
研究で培った専門性を社会に役立てたい、知的好奇心を持って誠実に仕事に取り組みたい。そんな想いを持つ方にとって、機構は魅力的な環境だと思います。損害保険や金融の知識は、入社してから学べます。大切なのは、物事の本質を探求しようとする姿勢です。皆さんがこれまで学んできたこと、そして研究活動を通じて身につけた論理的思考力は、必ず活かせます。私たちと一緒に社会を支えるインフラをつくっていきましょう。
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数学的素養を活かして社会に貢献 アクチュアリーとして保険料率の「品質」を守る
- 関川 巧海せきかわ・たくみ
- 料率業務企画部 料率・リスクモデル品質グループ/日本アクチュアリー会正会員
- 千葉大学 理学部 数学・情報数理学科 卒
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入社を決めた理由を教えてください
物事を深く抽象的に考えるのが好きで、大学では数学を専攻し、中でも実社会とのつながりが深い確率論・統計学の分野を学んでいました。当時は機械学習の注目度が上がってきた時期でもあり、これから世の中で必要になっていくだろうという考えもありました。
就職活動では、数学の知識を社会で活かしたいと考えてアクチュアリーを志望しました。保険会社に限定せず、様々な金融機関のアクチュアリー職を見ていく中で当機構と出会い、その公共性の高さに強く惹かれました。
当機構は営利を目的とせず、日本で唯一、損害保険会社が自社の保険料率の算出の基礎として使用できる参考純率や、自社の保険料率として使用できる基準料率を算出する組織です。「ここでしかできない仕事」を通じて社会に貢献したいと考え、入社を決めました。また、大学院進学も選択肢にあったのですが、当機構では働きながら研究に近いレベルで専門性を追求できる環境があることも決断を後押ししました。 -
アクチュアリーとしての仕事内容を教えてください
入社後は工場物件の火災保険料率算出や、AI技術の活用等の新たなデータ活用の企画・推進などの業務を経験した後、現在は料率業務企画部に所属し、各部署が算出する保険料率やリスクモデルが数理的に妥当であるかを確認・検証する数理チェックという役割を担っています。いわば、当機構が社会に送り出す料率の品質を保証するための「最後の砦」として、社内に対してガバナンスを効かせる仕事です。
グループでは保険種目ごとに担当が割り振られており、私は主に自動車保険を担当しています。具体的な業務としては、保険の料率算出に用いられる数理的手法やリスクモデルについて、手法の選択は適切か、手法の中身は数理的か、計算に誤りはないかなど、多角的な視点からチェックしています。また、昨年度は当機構内で発足したAI研究会の運営にも関わっており、現在も料率部門における業務効率化や品質向上を目的としたAI活用の検討・推進にも携わっています。 -
アクチュアリー資格取得までの道のりを教えてください
大学3年生の時に就職活動を見据えて勉強を始め、最初の1科目に合格しました。入社後は、当機構の充実したサポート制度を活用しながら勉強を続け、入社5年目に正会員になれました。1次試験の対策として外部講座を受講させてもらえたり、業務時間内に勉強時間を確保できたりと、組織全体で資格取得を後押ししてくれる風土に助けられました。特に2次試験の際には先輩方が勉強会を開いてくれ、直近の業界トピック解説や論文添削をしてくれるなど、手厚いサポートを受けることができました。
正会員になり、専門家としての肩書きを得たことで、自分の意見や判断に対する責任の重さをより一層感じるようになりました。その一方で、試験を通して学んだ内容をもとに自信を持って発言できるようになり、周囲からも専門家として認められ、より深く広範囲の業務に関われるようになったと感じます。その他、アクチュアリー会での活動を通じて、社外の専門家たちとのつながりができたことも大きな変化です。業界全体の動向をマクロな視点で捉え、社会に対してどのような貢献ができるかを考えるきっかけにもなっています。 -
理系で学んだことがどのように活かせていますか
大学で学んだ確率論や統計学の知識は、まさに現在の仕事の根幹をなすものです。保険料率の算出は、過去の膨大なデータから将来のリスクを予測する、統計そのものの世界です。教科書で学んだ分析手法を、保険会社から寄せられるビッグデータという実社会のデータに適用し、その妥当性を検証していく。理論が実社会でどう機能するのかを肌で感じられるのは、この仕事ならではの醍醐味です。
ときには、既存の手法だけでは解けない問題に直面することもありますが、そんな時には数学の抽象的な思考に立ち返り、物事の本質を捉え直すことが、解決の糸口になることも少なくありません。
また、私は入社後に必要性を感じて自主的にプログラミングを学びましたが、これも数学的な素養があったからこそ、比較的スムーズに習得できたと感じています。論理的に物事を組み立てる力は、あらゆる場面で役立つ理系の強みだと思います。 -
理系学生へのメッセージをお願いします
当機構には、アクチュアリーという高い専門性を追求できる環境と社会的意義の高い仕事に挑戦できる環境があります。非営利組織だからこそ、目先の利益ではなく、「社会のために何ができるか」を追求できるということ。そして、自分が携わった仕事が日本中の損害保険に還元され、人々の安心な暮らしにつながっていくことが、日々の仕事のモチベーションになっています。
皆さんが大学で学んでいる数学や統計学は、実社会で大きな価値を持つ強力なツールです。私自身、興味の赴くままに数学の道に進み、アクチュアリーという仕事に出会えました。皆さんも、興味を持てそうな分野があれば、その直感を信じて新しい世界に飛び込んでみてください。その挑戦の先に、きっと自分の能力を最大限に活かせる場所が見つかるはずです。