アクチュアリーは高度な数理スキルを活かす専門職として知られるが、その実像は「計算ばかりしている」というイメージとは大きく異なる。
三井住友海上火災保険が夏と冬に実施するアクチュアリーインターンシップでは、グループワークで8部署の実務を横断しながら、損保アクチュアリーの幅広い活躍領域と実務の思考プロセスを体感できる。5日間にわたる濃密なプログラムは、損保アクチュアリーの仕事内容に対する理解を深める機会になるはずだ。
同プログラムで講師を務める三井住友海上火災保険株式会社 パーソナルSME商品部 浅田翔大氏に、プログラムの狙いと魅力を聞いた。
損保アクチュアリーの活躍領域は、想像以上に幅広い
損害保険は、事故や災害だけでなく、企業の新事業や先端技術に伴うリスクまで幅広くカバーし、社会と産業の挑戦を支えるインフラとしての役割を果たしている。損害保険ビジネスにおいて多様なリスクを見極め、最適な形で備えるために、アクチュアリーの専門性が欠かせない。
損害保険アクチュアリーは、自動車保険・火災保険等の各商品、リスク管理、再保険、データサイエンスなど、幅広い領域で専門性を発揮する。損保は企業活動や社会の動きに密接に連動するため、業務は常に変化し続けるのだ。三井住友海上火災保険株式会社 パーソナルSME商品部 料率データ分析活用チーム 浅田翔大氏は「アクチュアリーは計算のイメージが先行しがちですが、実際には“計算した結果をどう分析し、どう判断し、どう伝えるか”が非常に重要です」と語る。そうしたアクチュアリーの幅広い活躍フィールドと、奥行のある業務を体感できるのが、三井住友海上のインターンシップだ。
8部署が登壇する、密度の高い5日間のプログラム
三井住友海上のアクチュアリーインターンシップは、5日間という日程を活かし、アクチュアリーが配属される各部門の講義とワークを半日ずつ体験できる構成になっている。初日は会社理解とアクチュアリーの全体像を知る導入から始まり、午後以降は損保アクチュアリーが活躍する多様な領域に触れられる。
「インターンシップを統括する人事はもちろん、経理、企業ファイナンス、傷害保険、自動車保険、リスク管理、再保険、ビジネスデザイン、合計8部門の社員が登壇し、事業や職種の概要のみならず、それぞれの部門で働くアクチュアリーの役割や業務内容をしっかり理解できるプログラムになっています」と浅田氏は語る。グループワークはケーススタディ中心で、実務の思考プロセスを疑似体験できるよう構成されている。
浅田氏自身が講師を務める自動車保険のパートでも、実務に基づいた課題に取り組む。計算ではない要素を中心としたワークで、商品開発の背景となるデータの考え方や指標を採用する際の懸念点まで議論することで、アクチュアリーが日々向き合うプロセスを体感できる。
「自動車保険は当社の収入保険料の約半分を占め、会社の収支を大きく左右する分野です。さらに自動車業界ではCASEと呼ばれる技術革新が急速に進んでおり、商品開発の在り方も大きく変わりつつあります。そうした動きの中で、新しいリスクを保険料率に反映していく面白さを体感できるようなワークを企画しました」。
【インターンで体感できる部署一覧】
内定者からのメンタリングにより、就活全体のイメージも具体化
また、DAY1~DAY4までの4日間は内定者が日替わりで各グループにメンターとしてつく点も、同社インターンシップの大きな特徴だ。「年齢の近い内定者が伴走することで、ワークの進め方に迷った際も気軽に相談でき、就活に関する悩みも話しやすいはずです」(浅田氏、以下同)
1日の終わりには「強み」と「期待を込めた改善点」を丁寧にフィードバックする時間が設けられる。その日のワークの様子を客観的に見てもらえることで、自分だけでは気付けない強みや課題を発見するきっかけになるだろう。学生にとって自身の伸びしろを理解するだけでなく、アクチュアリーの働き方や就活全体のイメージを具体的に描く手助けにもなるはずだ。
多様な部門に触れ、興味のある領域を見つけてほしい
このインターンに参加した学生の感想として多いのは、「実務に近い感覚を得られた」という声だ。浅田氏も講師として登壇するなかで、学生の成長を強く感じる場面があるという。「プログラム後半に個人ワークがあるのですが、前半の議論を踏まえて、我々実務者の感覚に近い回答が出てくることがあります。わずか半日でも理解度が大きく進んでいると感心させられます」。
また、損保数理への理解を深めながら実務知識を学べるのも、このインターンの特長だ。「損保数理を学び始めたばかりの学生でもキャッチアップできるよう、基礎から丁寧にお伝えします。金融知識が浅くても、まったく問題ありません。重要なのは、いろいろな部門に触れる中で“自分はどこに興味を持てるのか”を考えることです」。
変化の激しい業界で実務に触れることで、自分の興味がある領域を見つけるきっかけにもなる。実際に、同社のインターンシップを通して損害保険アクチュアリーの広さに触れ、視野を広げるケースも多いという。専門性を深めるだけでなく、就活全体の軸を見つめ直す機会にもなるはずだ。2月に開催するインターンシップPlus(DAY5)では、各部門の社員との座談会が開催される。様々な社員と話し、より具体的な働き方を知ることで自分の未来の可能性が広がるはずだ。
インターン当日の様子
【参加学生からの声】
- 業界の歴史や変遷、業界内での立ち位置等、ネットでは知りえない情報を知ることができた、アクチュアリーの存在意義についても言語化するきっかけになった。
- 社風や社員の人柄を感じられて大変参考になった。内定者が皆一様に<人柄が良い>と口を揃えるのも納得だった。
- データサイエンスとアクチュアリーの関係性、またその融合分野、業務の重要性について学べた。
- データの分析やモデル作成、議論を通じて新しい視点を得ることができ、有意義なインターンだった。
- 商品開発において日常生活に結びつけて考えることができた点や、実際の保険商品の価値や規制とのバランスを考える難しさに触れたことが印象深い。
- 内定者座談会では、就職活動や研究、資格の勉強との両立についてのリアルな話が聞けて良かった。
- 毎日内定者が担当についてくれて生の声を聞くことで、自身のキャリア設計に対する視点を広げることができた。
理系学生へのメッセージ
アクチュアリーは高度な数学だけを使うわけではありません。理系の方であれば理解できる範囲ですし、そこまで身構える必要はないと思っています。そして、アクチュアリーの仕事は計算だけではなく、その結果に至るまでの思考プロセスや分析、判断をどう言語化して周囲に伝えるかが非常に重要です。その点を、このインターンで実感してほしいという思いがあります。
また、損保アクチュアリーには多様な活躍領域があり、新しい分野に挑戦できる環境もあります。就活はいろいろ迷うことも多いかもしれませんが、視野を広げて、自分が納得できる選択をしてください。
PROFILE
三井住友海上火災保険株式会社
浅田 翔大(あさだ・しょうだい)
パーソナルSME商品部 料率データ分析活用チーム
京都大学大学院 理学研究科 数学・数理解析専攻 修了
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