理系の数理能力や、確率・統計といった数学知識を活かせる“アクチュアリー”。アクチュアリー就職活動/インターンシップのスケジュール/時期や資格試験、就職難易度、新卒採用実績企業、選考対策を解説します。


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【1】アクチュアリーとは

確率や統計といった数学の知識を活かせる就職先として注目が高まる金融専門職『アクチュアリー』。アクチュアリーとは、様々なリスクや社会の不確定要素を確率論や統計学といった数理的手法を駆使して保険料率を算定したり、保険会社の経営の健全性チェック、リスク分析などに取り組む「保険や年金、金融などの多彩なフィールドで活躍する“数理業務のプロフェッショナル”」です。生命保険・損害保険業界、信託銀行、コンサルティングファームなど、活躍フィールドは広く、理系ニーズの高い専門職です。

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【2】アクチュアリー就活の業界研究

アクチュアリーの代表的な活躍フィールドとして、生命保険、損害保険、年金(信託銀行など)の3領域が挙げられます。各業界におけるアクチュアリーの特徴や仕事内容の違いについて解説します。

●生命保険アクチュアリー

生命保険会社におけるアクチュアリーの主な仕事は、「保険商品の設計・開発」と「会社の収支分析・健全性のチェック」があります。

「保険商品の設計・開発」については、生命保険は数十年にも及ぶ長期契約が前提となるため、長期的な視点で金利変動や人口動態、死亡率の推移など膨大な統計データを踏まえて、保険会社と契約者双方にメリットのある保険商品の開発が求められます。

「会社の収支分析・健全性のチェック」では、会社が健全な経営を継続し続けるために、責任準備金(保険契約者に支払う保険金を確実に支払う為に、保険会社が保険料の中から積み立てる資金)の積立金額の評価、ALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)など、全社的な経営状態のチェック業務を担います。

●損害保険アクチュアリー

生命保険業界と同じく、損害保険業界においても「保険商品の設計・開発」と「会社の収支分析・健全性のチェック」がアクチュアリーの主要ミッションとなります。

損害保険アクチュアリーの特色については、自動車保険、火災保険、傷害保険、地震保険、海外旅行保険など、保険の種類が多く、近年もサイバー保険や月保険といった新商品が次々と生まれているという点が挙げられます。天候デリバティブ(天候データをもとに指標を作成し、異常気象や天候不順による損失を軽減する取引)など、保険以外にもリスクを引き受ける商品があります。それゆえ、損害保険アクチュアリーは、多種多様なリスクと向き合い、前例のない新商品の開発に取り組めるのが醍醐味といえるでしょう。

●年金アクチュアリー

年金アクチュアリーは「公的年金」や、従業員が退職後に受け取る「退職金・企業年金」の制度設計に取り組みます。信託銀行や年金部門を有する生命保険会社が活躍フィールドとなり、将来的な支払いの可能性や運用中の利回りなどを確率・統計的な手法のもとに試算を行うほか、顧客企業に対して掛金設定や退職金・企業年金制度のコンサルティングなども行います。

退職金・企業年金などの人事制度は企業ごとに異なるため、顧客企業の要望を丁寧に汲み取ったうえで、プレゼンテーションを行うことが求められます。そのため、数理能力だけでなく、コミュニケーション能力も年金アクチュアリーにとって重要なスキルといえます。

【3】アクチュアリーインターンシップ/就活のスケジュール・時期

アクチュアリーの就職活動は一般的な就活時期よりも、早期から行っているケースが多く、早めに情報収集することが重要となります。また、インターンシップの重要性も高く、サマーインターンシップに参加し、早期に企業と接点を持つことは大きなアドバンテージとなります。

現在の就職活動ルールでは、卒業の前年度(学部卒なら3年生、修士了なら1年生の4月以降)から動き出すのが一般的です。下記に例年の一般的なアクチュアリー就活スケジュールを記載していますが、年度によって企業の採用スケジュールは変わるので、自身でしっかり情報収集しましょう。

アクチュアリー就活の選考プロセスで特徴的なのは、数理能力をはかる筆記試験が実施されるケースがある点です。微分積分、線形代数、確率、統計といった領域の問題が出題されますが、企業の過去問を見る限り、数学科でないと解けないような難問が多く出題されるわけではなく、大学の基礎教養レベルの出題が中心となっているケースが大半で、基礎をしっかり押さえておくことが重要となります。

例年のアクチュアリー就活生の動き

4月~6月 翌年度が卒業予定の学生(学部3年、修士1年など)を対象としたサマーインターンシップ情報の公開が始まる。6月上旬からエントリーシート受付を締め切る企業が出始める。※2027年卒業予定であれば、2025年の4~6月が当該時期となります。
7月 サマーインターンシップの選考(面接など)開始。
8月~9月 サマーインターンシップ実施。
10月~12月 ウインターインターンシップの情報公開が公開され、1月にかけて選考を実施。アクチュアリー資格試験の申込締切(例年10月上旬)。アクチュアリー資格試験を受験(例年12月上旬)。
1月~2月 ウインターインターンシップに参加。外資系保険会社、コンサルティングファームなど一部企業の本選考が始まる。
3月 採用選考が本格化。エントリーシート締切、筆記テスト、面接など選考のピーク時期。一部企業で内々定出しが始まる。
6月 内々定通知

※上記日程は26卒までのアクチュアリー就活時期をもとに作成しています。就活時期は年度によって前後する可能性があるので、自身でしっかり情報収集することをお勧めします。27卒以降については専門人材への採用早期化、対面イベント開催の活発化、就活プロセス/時期が変動する可能性があるのでご注意ください。

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【4】アクチュアリー就職の難易度、求められるスキル・適性

新卒の就職活動において、アクチュアリー採用を行っている企業は多くなく、さらに各社の採用人数は数名程度です。それゆえ、就職難易度が高い職種といえるでしょう。各企業の新卒採用において評価するスキルは異なりますが、比較的求められることが多いスキルや能力についてまとめました。

求められるスキル・適性

数理能力 微分積分、線形代数、確率、統計といった大学基礎教養レベルの数学をしっかり理解する必要あり。
学歴(学部学科) 結果的に数学科出身者の採用が多いものの、物理、情報工学、工学系、航空宇宙、経済など様々な専攻出身のアクチュアリーが活躍している。専攻および学部・修士といった所属が評価につながるケースは少ない。
コミュニケーション能力 アクチュアリーはその業務の特性上、様々な部門の社員とコミュニケーションをとる機会がある。時には数学領域の専門知識を有していない相手に対して、わかりやすい説明を行う必要があるため、相手の理解度を推し量れるコミュニケーション能力は必須。
英語力 募集要項に求める英語力レベルを明記している企業は多くはないが、グローバル展開に力を入れている企業は増えており、海外関連会社での業務など、ビジネス現場で英語力を求められるシーンは増加傾向にある。
アクチュアリー資格試験 科目合格者や試験対策に取り組んでいる学生は、評価につながるケースもあるが必須条件ではない。アクチュアリー内定者で科目合格者は例年5~6割程度。
文章力 アクチュアリー資格試験の二次試験は論述となるため、自身の考えを論理的に伝える文章能力も必要。また、実際の業務でも文章力は重要なスキル。
ビジネス感覚 アクチュアリーは計算屋ではなく、あくまで数理能力に長けたビジネスパーソン。「与えられたデータをもとに状況を正確に把握し、今後どうしていくか」というビジネス感覚が強く求められる。
継続学習能力 正会員になるまでに平均8~9年かかるとも言われるアクチュアリー資格試験。就職後は通常業務に加えて勉強することが必要なため、継続的に学習を続ける力が不可欠。

【5】アクチュアリー資格試験の概要と対策

日本で「アクチュアリー」と公式に名乗るためには、日本アクチュアリー会の資格試験に合格し、「アクチュアリー正会員」の認定を受ける必要があります。アクチュアリー資格試験は、まず「第一次試験」の5科目(数学、生保数理、損保数理、年金数理、会計・経済・投資理論)を合格すると、「準会員」になります。(1科目でも合格できると「研究員」)

「二次試験」では、「生保」、「損保」、「年金」の3つの専門分野から、自分の携わりたい分野を選択し、実務的な法律および論述試験を2科目合格することで、晴れて「アクチュアリー正会員」となります。

アクチュアリー資格試験は、正会員合格まで平均して8~9年とも言われる難関試験です。一次試験における各科目の合格率も平均10~20%程度となっており、5科目すべてを合格するためには入念な対策が必要です。そのため、独学で資格取得を目指す受験者は多くなく、まず保険会社や信託銀行などにアクチュアリー候補生として新卒採用された上で、様々な実務をこなしながら、会社のバックアップを受けて資格勉強を進めていくのが一般的です。

アクチュアリー試験は年一回12月初旬に行われています。同じ年に一次試験と二次試験を受験できないので、最短でも合格までには2年かかることになります。過去問はアクチュアリー会公式ホームページに掲載されているので、興味のある人はチェックしてみましょう。また、理系ナビでもアクチュアリー試験対策プログラムを毎年実施しているので、アクチュアリー志望者の方はぜひ活用してください。

【6】アクチュアリーの新卒採用実績がある企業

生命保険 日本生命、第一生命保険、住友生命、明治安田生命、かんぽ生命、三井住友海上あいおい生命、東京海上日動あんしん生命、ソニー生命、アクサ生命、アフラック生命、プルデンシャル生命、マニュライフ生命、ジブラルタ生命、メットライフ生命、ライフネット生命、大同生命、朝日生命、太陽生命 など
損害保険 東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、損保ジャパン日本興亜、ソニー損害保険 など
年金 三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行 など
その他 マーサー ジャパン、トーア再保険、損害保険料率算出機構、PwC Japan有限責任監査法人、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング など
理系ナビで公開中のアクチュアリーなど金融専門職はこちら

≪アクチュアリーを志望する理系学生へのメッセージ≫

アクチュアリー就職を希望する理系就活生と話をしていて気になるのは「数学が得意だからアクチュアリーを目指す」という方が多いことです。もちろん、「自身の得意領域を仕事にしたい」のは自然なことなのですが、多くのアクチュアリー志望者において「数学が得意」というのはスタートラインにすぎません(そもそも数理試験を突破している就活生が面接に臨めるので、正直なところ数学力のみで他者と差別化を図るのは難しいでしょう)。

本気でアクチュアリーを志望するのであれば、「その数理能力を活かしてどんなアクチュアリーを目指したいのか(そもそも数理能力を活かせる仕事としてアクチュアリーが最適解なのか)」をしっかり考える必要があります。そのためには、アクチュアリーの仕事内容やキャリアを深く理解することは不可欠。近年、アクチュアリーの仕事に関する記事を見かける機会が多くなってきましたが、取り上げられているのはアクチュアリー業務のほんの一部にすぎません。WEBや書籍だけでなく、OB/OG訪問やインターンシップなど自身の足でアクチュアリーの実態や各社の風土、最新の取り組みといった情報を収集することで、目指すべきアクチュアリー像のイメージを固めていってください。

理系ナビでは、アクチュアリー就活に関する情報発信、就活相談、イベント開催を随時行っているので、ぜひ活用してください。

理系ナビ キャリアアドバイザー/アクチュアリー担当 三好


お知らせ

理系ナビではアクチュアリーを志望する理系就活生のサポートに力を入れており、アクチュアリーのインターンシップ/新卒採用情報の掲載はもちろん、アクチュアリー資格取得支援プログラムや就活対策セミナーなども実施しています。2027年卒業予定者向けサービスでも「アクチュアリー就活入門セミナー」、「アクチュアリー内定者座談会」の開催を予定しています。「理系ナビ」に登録いただければ27卒向けのアクチュアリー就職情報をいち早くお届けします。

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