アクチュアリー

アクチュアリーとは

確率・統計などの手法を用いて、保険料などを算出する数理分析のプロフェッショナル『アクチュアリー』。理系として培った数理能力を活かせる仕事として、理系学生からの注目が年々高まっています。

アクチュアリーの仕事は、将来のリスクやさまざまな不確定要素を、確率論や統計学といった高度な数理的手法を駆使して、目に見える形に処理すること。アクチュアリーが数理業務のプロフェッショナルと呼ばれるゆえんです。

アクチュアリーの仕事

保険会社によっては、アクチュアリーが社長を務める企業もあります。これはアクチュアリーが、それだけ「保険」というビジネスにとって重要な存在であることの表れだと言えるかもしれません。では、具体的に彼らがどのような業務を行っているのか、ここでは<保険>と<年金>という二つの分野でアクチュアリーがどのような役割を果たしているかを見てみましょう。

●生命保険/損害保険

生命保険/損害保険会社におけるアクチュアリーの仕事としては、主に「保険商品の設計・開発」と「会社の収支分析・健全性のチェック」という二つが挙げられます。

将来的に会社が支払うことになるであろう保険金をさまざまな数理的手法を利用して予測した上で、適正な保険料(顧客が保険会社に払い込む掛け金のこと)を設定し、保険会社と契約者双方にメリットのある保険商品を開発するのが前者の基本的な仕事内容。

後者は、保険会社がサービスを継続し続けるために、会社が健全な経営をしているか、責任準備金(保険契約者に支払う保険金を確実に支払う為に、保険会社が保険料の中から積み立てる資金)をきちんと積み立てているかなど、全社的なファイナンスをチェックする仕事になります。

保険会社が、そもそも保険金を支払うために存在していることを考えれば、適正な保険料を算出したり、会社の経営の健全性をチェックするアクチュアリーの仕事は、いわば生命保険/損害保険会社の存在意義と直結した仕事だといえるでしょう。


●年金

昨今何かと話題が多い年金制度。公的年金にせよ私的年金にせよ、そのシステムを長期にわたって運用していくためにもアクチュアリーの存在は欠かせません。

この分野におけるアクチュアリーの主な仕事は、将来的な支払いの可能性や運用中の利回りなどを確率・統計的な手法のもとに試算すること。企業年金について言えば、例えば従業員が退職後にきちんと年金を受け取れるように、将来起こりうるさまざまな出来事の可能性―経済状況の動向であったり、社員の突発的な退職など―を数学的に分析し、企業・従業員双方が満足できるような年金制度を設計・提案することが、年金アクチュアリーに期待される役割となります。

こうした仕事が、今後訪れるであろう少子高齢化社会において人々が安心して老後の生活を送るために、極めて重要な仕事であることは言うまでもないでしょう。

なお、年金アクチュアリーは、生命保険会社や信託銀行の他、人事系のコンサルティング・ファームなどでも多く活躍しています。

上記のように、主に保険と年金の分野で活躍するアクチュアリーですが、この他にも「不確実性」を扱う必要のある多くの金融系ビジネス分野において、確率と統計のプロフェッショナルである彼らの需要は急速に高まっています。

アクチュアリーになるには

「数学好き」の人にとってはまさに天職とも呼びうる「アクチュアリー」という職業ですが、 どうしたらその「アクチュアリー」になることができるのでしょうか。

日本で「アクチュアリー」と公式に名乗るためには、日本アクチュアリー会の資格試験に合格し、同会の「正会員」であると認定される必要があります。 しかしこれは、平均取得年数8年から9年とも言われる難関の試験。そのため、独学で資格取得を目指すという方はあまり多くなく、 一般的には、まず保険会社や信託銀行などにアクチュアリー候補生として採用された上で、会社の金銭的・時間的バックアップを受けて、さまざまな実務をこなしつつ、勉強を進めていく方が大多数なようです。

試験は基礎科目5科目の一次試験と応用科目2科目の二次試験があり、前者は「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」「会計・経済・投資理論」の5科目から構成されています。 ここで二次試験を受けるに足る基礎知識があるかどうかが試され、これらすべてに合格しなければ、次に進むことはできません。 二次試験は「生保」、「損保」、「年金」の3つの専門分野の選択制。受験者はここで、将来自分の携わりたい分野を選びます。

なお、試験は年一回12月に行われるのみ。 一次と二次を同じ年に受験することはできないので、最短でも資格取得には2年かかることになります。 問題例など詳しい試験情報は日本アクチュアリー会のホームページに掲載されているので、 興味のある人は一度のぞいてみてください。

『日本アクチュアリー会』

※試験は例年12月に実施されていますが、申し込み締め切りは夏ごろと早めになっています。
申し込み忘れのないようご注意ください。

アクチュアリーに求められる資質・能力

理系ナビではこれまで継続的にアクチュアリーの方々にインタビューを行ってきましたが、 その際「どのような人がアクチュアリーに向いていると思いますか」という質問に対して、 頻繁に耳にした意見をここでいくつか挙げてみましょう。

●数学的素養

文系出身のアクチュアリーもいることから、必ずしも数学全般に関する高度な知識が求められるということはありませんが、少なくとも確率や統計に関してある程度の知識・素養がなくてはアクチュアリー認定試験の一次を突破することも難しいようです。そういう意味でこれは、アクチュアリーにとって必須の素養と言えるかもしれません。


●論理的思考力

「不確実な将来を予測する」というと、なんだか超能力のような響きがしますが、それは数字を一つ一つ論理的に積み上げていった結果の「思考力」に他なりません。逆に言えば、数字に隠された背景や数字から予測されうる未来を説得力あるものにするためには、細部に至るまで徹底したロジックによる裏打ちが欠かせないのです。

●コミュニケーション能力

他の多くの職業同様、会社という組織で働く以上、アクチュアリーにも当然コミュニケーション能力は求められます。とりわけ、数理的な作業から導き出された結論を、専門外の人にもわかりやすく伝える能力は大切なようです。

●柔軟性

アクチュアリーの仕事が、「数学」と最も大きく異なる点の一つとして、正解がひとつではないという点を指摘することが出来ます。ひとつの「解」に固執せずに、常にさまざまな可能性を視野に入れながら作業する柔軟さは、リスクを管理するアクチュアリーにとってはまさに必要不可欠な資質と言えるでしょう。

●継続学習能力

難易度の高い資格試験の勉強を継続的に取り組むのはもちろんのこと、保険業法などの改正が業務内容に影響を与えることも多々あるため、アクチュアリーは常に最新の情報をキャッチし、学び続けることが求められます。

増え続けるアクチュアリー需要

会社の中でのポジションや経験年数など、さまざまな条件によって数字は変わるので一概にアクチュアリーが給料の高い職業であるということはできませんが、同資格の保持者が日本でも約5000人しかいないことを考えれば、その希少価値への対価として、企業がアクチュアリーに対してある一定以上の賃金を支払っていると推測することはあながち的外れではないはずです。そして、金融自由化や年金制度の改革、少子高齢化社会の到来などの影響によって、今後もますます、アクチュアリーに対する需要は高まっていくでしょう。