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三菱UFJ銀行


【キャリア情報誌 理系ナビ 2026年秋号 掲載記事】

近年の金融業界では、データサイエンスやAIが必要不可欠になりつつある。銀行を中心とする多くの金融機関は、独自の経営戦略や事業戦略のもと、様々な形でデータ・AIの利活用を推進し、より付加価値の高いサービスの開発・提供や業務の効率化・高度化の実現を目指している。本記事では、日本の金融業界を代表するメガバンク、三菱UFJ銀行でお客さまのリスクヘッジを支援する市場部門における、データサイエンティストにフォーカスを当て、理系人材の活躍フィールドを紹介する。

PROFILE

三桝雄大

イノベーションラインのチームメンバー。お話を伺ったのはこちらの方です。
[前列中央]三桝 雄大(みます・たけひろ)
株式会社三菱UFJ銀行
市場企画部 市場エンジニアリング室 DX推進グループ イノベーションライン
京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学専攻 修了


銀行の市場部門をデータサイエンスとAIで支援

三菱UFJ銀行では数百名のデータサイエンス人材が活躍しており、MUFGが掲げる「世界が進むチカラになる。」というパーパスの実現に向け、多様な事業領域でデータやAIに関する高度な専門性を活かして活動している。

その中でも、市場エンジニアリング室 DX推進グループ イノベーションラインのメンバーは、金融商品のセールス&トレーディング業務、トレジャリー業務を担う市場部門に対し、データ分析を通じたインサイト提供やAI活用の支援を行っている。同ラインが発足した2021年から参画している三桝氏は、チームの特徴や業務の変遷について次のように説明する。

「発足当初は機械学習モデルの作成と本番保守運用までがメインでした。現在はより直接的にフィードバックを得て改善につなげるため、Webアプリケーションの内製開発まで担うなど、チームとしての対応領域を広げています」(三桝氏、以下同)


市場データを活用した多様なモデル・アプリケーションを内製開発

イノベーションラインでは、債券・株・為替の価格、注文・約定、金融ニュース、マクロ経済、企業の財務など、様々な種類の市場データを収集・分析し、市場部門に対してモデルやアプリケーションとして提供することで業務効率化や収益力の向上に貢献している。

こうした取り組みの一つが、銀行経営を支えるバランスシート予測だ。同行が保有する大量の取引データやマーケットデータに基づいて、将来の預金と貸出のギャップを予測するモデルを開発し、効率的な資金調達やリスク管理を支援する。

また、各人の相場観に基づきトレーディングを行っている市場部門のトレーダー向けに、操作判断を支援するモデルの開発にも取り組む。様々なマーケットデータを活用して市場動向を分析、トレーダーの判断を支援するシグナルを提供するモデル開発を手がけ、トレーディングの現場でも活用されている。

さらに、市場部門のセールス・マーケターに対しては、お客さまの企業価値向上を支援するためのセールス・マーケティングアプリを開発・提供している。お客さまの財務情報や事業環境などを分析し、資金調達や資金決済などに関する様々な財務課題を可視化することで、課題解決に向けた提案活動を支援する。さらに、経験豊富な社員の知見を収集、生成AIに取り込むことで、効率的かつ高度な顧客分析を実現している。また、イノベーションラインは2024年末にラスベガスで行われたAWS主催イベントで同アプリケーションをテーマに登壇している。

金融、市場ビジネスにおけるデータ分析ニーズ

データサイエンスに加え、セキュリティなどの周辺領域の知見も習得が可能

三菱UFJ銀行のような大手金融機関には多種多様なデータが存在しており、データサイエンス人材が扱えるデータの種類や規模感は他業界とは大きく異なる。このような膨大かつ幅広いデータを扱えることこそが、銀行で活躍するデータサイエンス人材のやりがいであり、醍醐味といえるだろう。

また、イノベーションラインでのデータサイエンス業務を通じて、統計学や金融工学、Python、SQL、機械学習/AI、時系列解析といった多岐にわたるスキルのほか、Webアプリケーション開発やセキュリティ、コンプライアンスなど、周辺領域に関する幅広い知見も身につけられるという。加えて、働く環境についても大きな魅力があると三桝氏は語る。

「メガバンク内の組織でありながらベンチャーのようなカルチャーが根付いており、自身のタスクの進め方に裁量を持ち迅速に物事を進められます。また、Claude Codeのようなコーディングエージェントについてもリリース後に大きく間を空けず導入・活用するなど、安全性を担保しつつ最新の環境で分析や開発を行えるよう世の中の動きをキャッチアップしています」


グローバルな環境と「事業貢献」を重視するチームカルチャー

また、同ラインではグローバルに働く機会があるほか、事業の成果に直接貢献できる環境も整っている。三菱UFJ銀行は世界各地に拠点を持ち、グループ会社のチームや海外拠点のメンバーと連携してプロジェクトを進める機会も多い。業務では、英語でのミーティングや、技術・事例に関する情報交換を行う機会も日常的にあるという。

「入行当初から高い英語力が必須というわけではありませんが、実際の業務を通じて英語を使い、グローバルな環境で経験を積める機会があります。海外のチームが持つ知見や技術に触れられることも、大きな刺激になっています」

さらに開発に取り組むうえでは、単に高度なモデルやアプリケーションを作ること自体を目的とせず、実際の業務で活用されて事業成果につながることを重視する文化が根付いている。

「技術的に高度なものを作るだけでなく、それがユーザーの課題解決や業務の高度化にどう貢献するかを重視しています。現場のメンバーと対話を重ねながら、実際に使われるものを形にし、その先の事業への貢献まで見届けられるのが、この仕事の面白さです」


情報系学部出身者に限らず、幅広い理系人材が活躍できるフィールド

三菱UFJ銀行のイノベーションラインは、組織名の通りイノベーションの創出を目指しており、データやAIを活用して「0→1」で新しいものを生み出すことを重視している。そのため理系学生には、基本的な数理的素養、研究・実験を通して培った論理的思考力やPDCAの遂行能力に加え、新しい情報や技術を積極的にキャッチアップしていく知的好奇心が期待されている。その一方で、イノベーションラインは情報系学部出身者以外にも幅広く門戸を開いているという。

「当行のフィナンシャル・エンジニアリングコース採用では、入行後に半年間の研修が用意されています。その中では、データ分析やプログラミングをはじめとするデータサイエンスに関する研修も行われます。専門知識は入行後に身につけられるため、情報系に限らず、幅広い分野の学生にチャレンジしてほしいですね」

データサイエンス・AIによるイノベーションの最前線を走っている三菱UFJ銀行。データ分析やAIを学んできた情報系の学生はもちろん、データサイエンスに興味を持つ多くの理系学生にとって魅力的な活躍フィールドになるだろう。


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