基礎能力から専門能力まで、理系を欲する金融業界

理系の就職先と言えば、メーカーやIT 企業を思い浮かべる人が多いかもしれないが、理系の可能性はそれだけではない。意外かもしれないが、金融業界も理系を求めているのだ。金融業界がなぜ理系学生を求めるのか。その理由について研究していこう。


文系職/理系職はもう古い?文系職の代表だった金融業界は理系を求めている

「文系職」「理系職」といった言葉がある。モノづくりにかかわるメーカーや、プログラマーが活躍するIT企業で働く専門職は「理系職」、対して商社やマスコミで働く人は「文系職」といった具合だ。職種によって文系の出身者が向いているのか、理系の出身者が向いているのか、と区別するために使われていた言葉だ。

専門的な知識や論理的な思考力が必要とされる左脳寄りの仕事は理系職、対して柔軟な発想やコミュニケーション能力が求められる右脳寄りの仕事が文系職。そんな考えが背景にあったようだが、文系職・理系職という分け方は既に時代遅れなのかもしれない。というのも、文系職の代表として見られていた金融業界が、少し前から理系の採用に積極的なのだ。

金融業界がなぜ理系採用に積極的なのか。その理由の一つとして、“理系学生が大学での研究を通じて培ってきた論理的な思考力を企業が求めているから”ということが挙げられる。金融業界は他業界と比べて一つの判断で大金が動くケースが多く、「何となく」という直感による判断は許されない。それゆえ、論理的に物事を考えてビジネスを進めていくことが評価される土壌が整っているわけだ。

もう一つの理由は、理系が数字に強いから。お金という数字でしか見えないものを取り扱うことになるため、業務の端々で数字を目にすることになる。どんな職種であれ、数字に強いことが求められるのが金融業界なのだ。

理系の専門性を求めている金融業界の専門職とは?

「論理的な思考力」「数字に強い」といった理系学生の特長は、理系の基礎能力とでも言うべきもの。金融業界で特に求められるとはいえ、ほかの業界でも多かれ少なかれ評価されている。それでは理系の専門能力は必要とされていないのだろうか。

実は、金融業界では専門能力までも高評価を受けている。例えば、保険商品を開発する「アクチュアリー」、高度な数理モデルを駆使して投資判断に役立てる「クオンツ」と呼ばれる専門職は理系出身者ばかり。数学や物理を専攻してきた先輩たちが活躍しているのだ。もちろん、金融企業のIT部門でも情報系の専門性が評価されていることを忘れてはならないだろう。

そうした職種は直接的に理系の専門性を活かせるわけだが、間接的に理系の専門性を活かせる職種もある。投資銀行部門やM&A、ベンチャーキャピタル関連の仕事などでも理系の専門性を活かせるのだ。 これらの職種では、投資や融資、買収などを行う先の企業について、正しく価値を評価することが重要になる。論理的に財務面の数字を積み重ねて考えることも大事だが、それ以上に大事になるのは「その会社の事業のことを分かっているか」。メーカーやITの業界では、対象企業の持つ特許・製品の価値など、企業の技術力を正確に把握することが非常に大切。そう考えると、文系よりも理系の方が、企業の持つ技術力を肌身で理解できるため、アドバンテージを有しているのだ。

このように、理系の基礎能力や専門能力が評価される金融業界。とはいえ、「金融業界」と一口に言っても、その中には銀行や証券、保険などさまざまな業種がある。それぞれどんな事業で、どのような職種で理系を求めているのか。次ページでまとめてみた。金融業界の概要をつかむためにざっと見ておいてもらいたい。


金融業界の代表的な業種

銀行

事業概要:企業や個人からお金を預かり、お金を必要とする企業や個人にお金を貸し付けることで、資金の循環を円滑にするのが銀行の仕事。資金を欲している企業に融資してもいいかどうか、正確に審査しないと貸し倒れのリスクが高まってしまう。そういった事態を防ぐべく、統計などを用いた数理的なデータが融資の判断に使われている。

募集職種・部門:リスク管理、ホールセール営業、リテール営業 など

信託銀行

事業概要:信託銀行とは、個人や法人から資金、年金、不動産、証券などを預かり、その運用・管理に当たる機関のこと。さまざまな専門職があり、企業年金関連の業務を扱う年金アクチュアリー、証券の運用に当たるファンドマネージャー、証券化・デューデリジェンスなどを行う不動産金融関連の職種などで理系出身者が活躍している。

募集職種・部門:年金アクチュアリー、ファンドマネージャー、クオンツ、不動産金融関連職 など

証券会社・投資銀行

事業概要:株式や債券など有価証券の売買や発行を行い、企業の資金調達支援やM&A、I PO関連のアドバイザリーを行うのが証券会社や投資銀行だ。巨額の資金を運用して有価証券を売買するトレーダー、金融商品の開発職、それを販売するセールス、投資先の適・不適を判断するアナリストなど、理系が活躍できる幅広いフィールドがある。

募集職種・部門:投資銀行部門、トレーダー、商品企画、セールス、アナリスト など

アセットマネジメント

事業概要:アセットマネジメントが手がけているのは投資信託や年金商品などの企画・運用。株式、債券、為替、不動産の証券化を通じて顧客資産の最適な運用がミッションとなる。高い投資利回りが見込める金融商品を生み出す商品企画、運用を手がけるファンドマネージャーといった職種で理系が活躍している。

募集職種・部門:ファンドマネージャー、商品企画、アナリスト、トレーダー など

生命保険、損害保険

事業概要:人や物などを対象として天災・事故などの損害を補填するために用意されたのが生命保険、損害保険。自動車、火災・地震、旅行・レジャー、介護など、そのカバー分野は多岐にわたる。数学(統計・確率)を駆使して保険商品の開発に携わるアクチュアリーは、理系学生からの注目が高まっている。

募集職種・部門:アクチュアリー、クオンツ など

政府系金融機関

事業概要:政府系金融機関とは、日本政府が政策目的の達成のために設立した特殊法人を指し、民間金融機関ではカバーしきれないプロジェクトを手がけている。具体的には日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、住宅金融支援機構、商工組合中央金庫(商工中金)などがあり、民間金融機関と同様にアクチュアリーや投資銀行部門など幅広い職種・部門がある。

募集職種・部門:投資銀行部門、リサーチ、クオンツ、アクチュアリーなど