ディープラーニング(株式会社電通国際情報サービス(ISID))

ビジネス領域でAI活用のニーズが高まり続けている一方で、同領域の専門知識を持った人材は多くない。AIの専門家でなくとも「容易にAIモデルを構築したい」というニーズから生まれたのが、AIモデル構築と運用の自動化ソリューション「OpTApf/オプタピーエフ」だ。このソリューションを開発したのは、電通国際情報サービス(以下ISID)の全社横断組織「AIトランスフォーメーションセンター」。同製品の開発に携わった後藤氏に、プロジェクトの裏側やAIエンジニアに必要な素養を聞いた。《理系ナビ21秋冬号 掲載記事》


全社横断組織「AIトランスフォーメーションセンター」

DX推進に向けたAI活用のニーズの高まりに伴い、ISIDは2020年に社内のAI人材を集約した全社横断組織「AIトランスフォーメーションセンター(以下AITC)」を新設しました。 以前より金融機関や製造業の特定領域向けにAIソリューションを提供し、深層学習などの技術・知見を深めてきたISIDは、これらの技術・知見をAITCに集約し、全社ビジネスに横展開していくことで、幅広い業種・業態のお客様の新規事業創出やDX推進を支援しています。特に個々のお客様や業界を超えて多く見られる課題やニーズに対しては、スピーディに価値を提供できるようAITC内でAI製品の開発を行っており、主に「TexAIntelligence/テクサインテリジェンス」「OpTApf/オプタピーエフ」「DiCA/ディーカ」という3製品を展開しています。

OpTApf/オプタピーエフ


AIモデルの構築から運用までを自動化するソリューション

AIを活用したDX推進があらゆる業種・業態の企業にとって重要なテーマとなっています。AIモデルを自社内で開発・運用したいという企業のニーズも高まっているものの、当然ながらすべての企業にデータサイエンスの専門人材がいるわけではありません。そのようなニーズに応えるべく、ISIDはデータサイエンスの専門知識がなくても簡単にAIモデルを構築できるソリューション「OpTApf」、「TexAIntelligence」を提供しています。私はAITCの立ち上げ初期からこれらの製品開発グループに参画し、現在は「OpTApf」をメインに開発を手掛けています。

「OpTApf」はMicrosoft社が提供するクラウドサービスであるAzureをベースに機械学習モデルの構築から運用までを自動化するAIプラットフォームです。高精度のAIモデルを3ステップで簡単に構築できる点が特徴であり、業種・業態を問わず、機械学習を使った一般的なタスクは網羅できる汎用性の高さを誇ります。

「OpTApf」はAzure Machine Learningの機械学習プロセスを活用することでアプリケーションの開発と運用のプロセスを統合した環境を提供しますが、Azureサービスの頻繁な更新などMicrosoft Azureの進化スピードは非常に早く、私たちも遅れることなく追随していく必要があります。例えば、時系列データの分析が新たに行えるようになる一方で、今までの処理が困難になったりといった仕様変更などもありましたが、「OpTApf」は常に最新の情報にキャッチアップしながら進化を続けてきました。こうした取り組みのひとつの成果として、2021年7月には「マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー 2021」の「AIアワード」を受賞しています。

OpTApf/オプタピーエフ


専門分野を超えて、新しい価値を生み出す醍醐味

これからAIエンジニアとして活躍するためには、技術だけでなく、ビジネスや製品開発プロセスの理解も不可欠です。私自身も常にお客様目線を忘れないように心がけており、「OpTApf」の開発の際には誰でも使えるようにシンプルなUI・UXを意識しました。お客様の課題と向き合う当社のコンサルタントとも密接に連携し、リアルなフィードバックを取り入れながら開発が行えたおかげで、「機械学習から推論まで簡単に実行できた」という高い評価をお客様からいただくことができました。

AITCに所属するメンバーたちは、アプリケーション、クラウド、ビッグデータ、セキュリティなど幅広い分野の知識を持ち合わせています。製品を開発する際には様々な技術要素が絡み合ってくるので、フルスタックエンジニアであることは自然な姿だと言えます。さらには技術だけでなく、お客様のニーズや課題を正しく理解し、コンサルタントなどビジネスサイドのメンバーとも議論しながら、製品の構想を練り上げる力も必要とされます。

このように求められるものは多いのですが、機械学習を用いて既存のシステムやアルゴリズムでは成しえなかったことを実現し、新しい世界をお客様に提示できるのはAIエンジニアとしての最大の醍醐味です。特にAITCの場合、既に仕様が決まったものを作るのではなく、主体的に課題を見つけて提案し、自ら作り出すことができます。私自身、こうしたプロセスがとても楽しいですね。学生のみなさんには、ぜひ今のうちから一度自分で何かを作ってみて、世の中に価値を提供する醍醐味を感じ取ってほしいです。そうすれば自然と自分の専門分野以外にも視野も広がり、これから必要とされるエンジニアにとって大切な姿勢が学べるはずです。


PROFILE

後藤 勇輝

後藤 勇輝
株式会社電通国際情報サービス(2024年1月に株式会社電通総研に社名変更) Xイノベーション本部 AIテクノロジー部 兼 AIトランスフォーメーションセンター
電気通信大学大学院 情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻 修了