こんなところに理系部署〈国家公務員〉

日本における国の制度設計や政策実行を担う国家公務員。国の設計を担うジェネラリスト(総合職)や現場の最前線を担うスペシャリスト(一般職)として、それぞれの専門知識を活かして社会に貢献し、日本や世界で活躍しています。

中でも「技術系職員」には様々な理系の専門性を活かして活躍できるフィールドが広がっており、行政分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)、宇宙分野の研究開発支援、災害対策、在外公館や矯正施設等の建設・修繕など、その活躍領域は書き切れないほど多岐にわたっています。

本特集では、特許庁の特許審査官、環境省の地球環境局地球温暖化対策課の職員から、国家公務員として活躍する理系人材の具体的な仕事内容やその醍醐味を伺います。


【1】特許庁

PROFILE

久慈 純平

久慈 純平(くじ・じゅんぺい)
特許庁
審査第二部 一般機械 特許審査官
東京理科大学 理工学部 機械工学科 卒
【研究テーマ】振動音響学(視覚情報が音環境の主観的評価に与える影響に関する研究)


理系の専門性を活かし、産業の発展に貢献したい


理系バックグランドを活かして日本全体のイノベーションに貢献したいと考え、国家公務員、中でも特許庁を志望しました。特許審査官は最新技術に触れながら産業の発達に寄与できる点、理系知識に加えて入庁後に学ぶ法律知識も駆使しながら判断を行う専門性の高さ、「知的財産」という専門軸を持ちながら行政官として様々な経験も積める点に魅力を感じました。


自身の判断が世界経済・産業に影響を与える


特許審査は、世界各国の出願人から受け付けた発明に独占的な権利を認めるか否かを技術的・法律的観点から厳正に判断する仕事です。私が所属している審査第二部は機械関係の発明を担当し、審査対象は自動車、航空・宇宙、鉄道、ロボット、家電、医療機器まで多岐にわたります。審査結果は日本のみならず世界の経済や産業に影響を与え得る社会的意義の大きいものであり、この仕事の醍醐味といえます。

審査官に与えられている裁量は大きく、基本的に各職員の判断で査定を行います。とはいえ、周囲は親身に相談に乗ってくれる職員ばかりで困った時にはサポートが得られるなど、「個」と「チーム」の仕事がバランス良い点も魅力の一つです。さらに、充実した研修や手厚いOJTが受けられ、最新技術を学ぶ機会も豊富にあるなど、特許庁には「人を大切にし、育てる文化」があります。

審査官は審査以外の業務を担うこともあり、国際政策課で知財に関する対米国交渉や多国間交渉を担当していた時は日本ユーザーへの裨益を考えながら様々な調整を行いました。国際会議での発言やプレゼンは特にやりがいを感じました。


個人の裁量が大きく、働き方の柔軟性も高い


審査業務は仕事の進め方の面でも裁量が大きく、自分でメリハリをつけた働き方が可能です。フレックス制度やテレワーク制度も整っており、プライベートと仕事をうまく調整できます。私も希望の期間で育児休業を取得できており、柔軟な働き方をしながら知的好奇心を満たせる刺激的なキャリアを歩めていると感じています。



【2】環境省

PROFILE

福田 朋也

福田 朋也(ふくだ・ともや)
環境省
地球環境局 地球温暖化対策課 課長補佐
東京大学大学院 薬学系研究科 薬科学専攻 修了
【研究テーマ】新たな有機化学反応の開発と計算科学等を活用したメカニズム解析


公害被害が身近な地域で育ち、環境問題の解決を志す


私の出身は、四大公害の一つである四日市ぜんそくが発生した四日市市でした。小さいころから被害者や再生に取り組んだ企業人の話を聞く機会が多く、自然と環境問題に強い関心を持っていました。

大学では化学を専攻して、二酸化炭素を原料に使った化学反応の開発など気候変動対策への貢献につながる研究に取り組み、就職でも環境問題の解決を通じて国の発展に貢献したいと考えて環境省を選択しました。


国内にとどまらず国際的な視点で課題解決に取り組む


私が所属している地球環境局のミッションは国内外の両面から気候変動問題に立ち向かうことです。国際的観点では国連気候変動枠組条約締約国会議などを通じて地球全体の取組を我が国主体で進め、国内の観点では気候変動対策に資する新たな技術の社会実装・仕組みの構築に取り組んでいます。

その中で私は、地球温暖化対策課として環境省として進める国内の政策(制度・予算・広報など)を取りまとめ、関係省庁とすり合わせて日本全体の気候変動対策を推進しています。特に2024年は、NDC(国が決定する貢献)、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画、GX2040など、日本の気候変動に対する今後10年、15年の戦略を決める重要な年となっており、国内の政策を取りまとめる立場として関係省庁を連携させる役割を担当しています。

気候変動を含む環境政策は日本のさらなる成長の一翼を担っており、そこに横串を通して一つの担当課で考えたものを組み合わせて相乗的な効果を発揮できる政策にしていくのは、とても魅力的でやりがいを感じます。


山積する課題は新たな成長のチャンス


環境問題だけでなく、今の日本は様々な問題を抱えると同時に、そこで解決策を見出せれば新たな成長のチャンスとなります。課題解決と日本の成長に向けて、世の中のあらゆるツールを活用して取り組むのは国家公務員の醍醐味。日本の課題解決と成長を目指し、取り組んでいきたいという理系学生とお会いできるのを楽しみにしています!


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