半導体業界で広がる理系の活躍フィールド

成長を続ける世界の半導体市場において高い競争力を誇る日本の半導体製造装置/材料



世界市場で高いシェアを誇る半導体製造装置/材料

かつては世界市場を席巻した日本の半導体メーカーだが、近年は、激化する市場競争を背景にシェアが低下しており、半導体業界に対してネガティブなイメージを抱いている読者もいるかもしれない。しかし、日本の半導体製造装置や材料といった領域を見てみると、まったく異なった世界が見えてくる。半導体製造装置においては日本のメーカーが世界シェアの33%を占め【※1】、売り上げランキングでも上位15社のうち8社が日本の企業となっている【※2】。半導体材料においても日本は世界シェアの55%を占めており【※2】、世界トップシェアを獲得している素材・材料も枚挙に暇がない。

日本の半導体製造装置が世界市場で支持されている理由は、日本の半導体メーカーとともに蓄積してきた半導体製造のノウハウだ。半導体は高い精度で複雑な生産プロセスを経て生産されており、その“レシピ”は「製造装置」に集約されているといっても過言ではない。豊富なノウハウが詰まった製造装置は新興メーカーが一朝一夕で作ることは困難なのだ。半導体材料においても、日本はもともと素材・化学領域で世界有数のシェアを誇っている企業が多いことに加え、最終製品に適した材料を開発して量産化につなげる技術が高い。半導体メーカーからの高水準な要求に応えられる技術力や体制が、高く評価されているのだ。

※1 SEMIジャパン調べ  ※2 米VLSI Research調べ/2019年


成長市場で広がる理系の活躍フィールド

急速に成長を続ける半導体産業

世界の半導体市場規模は拡大を続けており、2000年の約22兆円から2017年には45兆円に倍増している【図表】。その背景としては、近年注目されているIoTや車の自動運転技術といったイノベーションの影響が大きい。これらのテクノロジーは多数のセンサーやメモリが必要となるため、半導体の需要に拍車がかかっているのだ。工場をはじめ、住宅、農業、医療、防災などあらゆる業界でIoTの導入が進んでおり、今後も半導体への需要はさらに高まっていくだろう。 半導体製造装置・材料メーカーにおける理系学生の活躍フィールドとしては、機械や電気、化学はもとより、情報、数学、物理など、幅広い知見が求められている。半導体製造装置・材料メーカーの多くはグローバルにビジネス展開をしており、海外を視野に入れて活躍したいという方にとって格好のフィールドといえるだろう。

記事協力:SEMIジャパン マーケティング部 部長 安藤洋一郎


半導体関連産業の紹介

●半導体製造装置

半導体の加工にはマイクロメートル(µm)、ナノメートル(nm)レベルの精度が必要とされ、高精度の加工装置が必要となる。半導体の表面に10nmから1000nm程度の薄い膜を堆積する『薄膜(はくまく)形成装置』、薄膜の不要な部分を取り除く『ドライエッチング装置』、微細なチップを洗浄する『プラズマクリーナー』などがある。

●半導体材料

半導体の主な材料には、半導体の基板となる『シリコンウエハ』、シリコンウエハに焼き付ける回路パターンの原版となる 『フォトマスク』、(シリコンウエハに塗る感光剤)などがある。半導体生産の増加に伴って、世界的に半導体材料の需要も高まっている。



半導体業界で活躍する理系社員インタビュー

Q 仕事内容について教えてください

上司 荏原製作所では半導体製造プロセスで用いられるCMP(化学機械研磨)やドライ真空ポンプ、排ガス処理装置などを手掛けており、私は生産技術職としてドライ真空ポンプを製造する自動化工場の稼働に向けて、物流工程の仕組みや部品供給の改善に取り組んでいます。自分のアイデアによってより効率的な生産工程、体制を作り上げていける点に手ごたえを感じています。

宮口 旭ダイヤモンド工業はダイヤモンド工具の専業メーカーで、私は生産技術職として、研究開発から生産現場のサポートまで、幅広い業務に携わっています。担当している製品は、シリコンウエハの表面を平坦化するCMP工程で用いられるCMPコンディショナー(研磨用のパッドのコンディショナー)。切れ味の調整や耐久性の強化といったお客様の様々な要望に応えています。

Q 半導体業界に関わる面白さはありますか

宮口 成長市場で世界と戦っているメーカーが多いので、当社製品に対する要求も厳しいです。それだけに、チーム一丸となって知恵を絞り、難易度の高い要求を実現できた時の喜びは大きいですね。お客様から「あの製品は良かった」といった反応を頂けると本当に嬉しいです。

上司 自分たちの仕事の成果によって半導体の性能が向上し、高性能な新製品が次々と生まれています。世の中の技術革新を支えているという手ごたえも大きいですね。

Q 大学で培った専門性はどのように活かせるのでしょうか

宮口 大学で研究していたガラスの知識が直接活かせる場面はありませんが、化学系の専攻なので、薬品の成分や効用についての知識を活かせています。最近は製品の研究、改良の場面で統計学的アプローチの重要性を痛感しており、自主的に勉強しています。

上司 私も専攻をそのまま活かせているというわけではないのですが、半導体業界では様々な領域の理系知識が求められていると感じています。私はレーザー核融合を研究していたのですが、そこで学んだプラズマや真空の知識などは半導体製造のプロセスでも役立っています。様々な知識を活かせる半導体関連産業は、新しいことにチャレンジできる面白いフィールド。いろんな専門性を持った方に飛び込んできてほしいですね。


PROFILE

宮口 葉月、上司 尚善

[左]宮口 葉月(みやぐち・はづき)
旭ダイヤモンド工業株式会社 第三製造部 CMP課
工学研究科 化学応用学専攻 修了

[右]上司 尚善(かみつかさ・なおよし)
株式会社荏原製作所 精密・電子事業カンパニー コンポーネント事業部 生産技術部 生産システム開発課
工学研究科 電気電子情報工学専攻 修了