医薬品業界《メーカー》理系ナビ業界研究


海外企業や創薬ベンチャーとのM&Aや、AIによる創薬研究が活発な医薬品メーカー

マーケットの中心は医療用医薬品。新薬開発が競争力を左右する

医薬品は医療機関などで医師が処方する「医療用医薬品」と、医師の処方箋なしでドラッグストアや薬局で購入できる「一般用医薬品」に分類されますが、国内医薬品市場の9割を占める医療用医薬品がマーケットをリードする存在です。また、医療用医薬品は「先発医薬品(新薬)」と、先発医薬品の特許が切れた後に製造される「後発医薬品(ジェネリック薬品)」に大別できます。

医薬品の研究開発、試験、販売を手がける製薬メーカーの競争力は創薬(新薬開発)に左右されるものの、新薬開発の成功確率は3万分の1ともいわれ、一つの新薬開発で約1,000億円のコストと10年以上の開発期間がかかるとされています。さらに大手製薬メーカーの収益を支えてきた高血圧症、糖尿病といった生活習慣病分野の新薬の特許切れが相次ぎ、収益が低下する製薬メーカーも出てきています。

莫大な新薬開発コスト、特許切れによる収益低下といった問題を背景に、医薬品業界ではM&Aが活発化しており、多くの国内製薬メーカーは合併再編を繰り返しながら規模を拡大してきました。こうした状況の中、核酸医薬や抗体医薬といったバイオ医薬品、希少がん、免疫疾患といった大手が参入しにくい領域で先端研究を行う創薬ベンチャーの存在感も増しており、大手製薬メーカーによる国内外の創薬ベンチャー買収や資本提携も相次いでいます。


欧米のメガファーマに対抗すべく、国境を越えた大型買収も

国内では武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、中外製薬、塩野義製薬などが主要製薬メーカーとして知られています。海外メーカーではファイザー(アメリカ)、ノバルティス(スイス)、ロシュ(スイス)、メルク(アメリカ)などが有名です。これらの欧米企業はメガファーマ(巨大製薬企業)と呼ばれており、買収と合併を繰り返しながら巨大化し、日本市場でも売上を伸ばしています。

日本の医療用医薬品市場は世界2位の規模を誇りますが、各社の売上規模は欧米企業に大きく差をつけられている状況です。しかし、2019年に武田薬品工業が希少疾患薬で世界トップクラスのシャイアー(アイルランド)を買収したことで世界のトップ10に入り、「日本初のメガファーマが誕生した」と話題になりました。

日本国内の創薬・医薬関連ベンチャーとしては抗がん剤系のソレイジア・ファーマ、iPS細胞培養液をグルーバル展開するリプロセル、独自のミドリムシ培養技術を持つユーグレナなどが注目されています。また、ジェネリック薬品の領域では沢井製薬、日医工、東和薬品が国内トップ3となっています。多くの製薬メーカーから新薬開発のために必要な治験業務(臨床開発)を受託するCRO(医薬品開発業務受託機関)へのニーズも高まっており、国内ではシミック、イーピーエス、エムスリーなどが知られています。


製薬メーカー各社がAIを使った創薬研究に注力。再生医療は実用化に向けた研究開発が進む

近年ではAIやビッグデータを活用した創薬に注目が集まっています。AIを活用することで、新薬開発にかかっていた莫大な開発コストの削減や開発期間の大幅な短縮が期待されているのです。すでにアメリカでは、がん患者一人ひとりに合わせた新薬を開発するために、ヒトゲノムの解析をAIで行うといった取り組みも進められているほか、日本でも2018年1月に塩野義製薬と旭化成ファーマがディー・エヌ・エーと提携し、AIを使った創薬研究をスタートしています。

再生医療等新法が2014年に施行された再生医療分野では、アカデミア発ベンチャーなどでiPS細胞関連の治験が始まっています。先行している体細胞・体性幹細胞による製品開発に関しても、2017年にロート製薬が肝硬変治療薬で参入しているほか、広島大学発のツーセルと中外製薬が共同でひざ軟骨再生の治験を行うなど、各領域で実用化に向けた開発が進んでいます。


医薬品業界で求められる理系の学部/専攻・スキル・知識

医薬品メーカーでは、研究職、臨床開発、ファーマコビジランス、生産管理・生産技術、品質保証、営業(MR)といった職種を中心に理系出身者が求められています。医学系、薬学系、化学系、バイオ系の人材が求められる傾向が強いものの、生産設備の開発やメンテナンスを担当するプラントエンジニア(設備エンジニア)などの職種では、機械・電気・電子系を専攻する学生へのニーズがあります。営業(MR)などの職種に関しても、専攻を問わず理系出身者を歓迎する企業が多いことも特徴です。

また、最近ではAIやビッグデータを活用した創薬の研究開発を進めようとする製薬メーカーが増えているため、統計解析やデータサイエンスに関する知識を持つ理系学生に対するニーズも高まっています。臨床試験で収集したさまざまなデータの分析・解析を行うCROでは、そうした傾向がとくに顕著であり、医薬系以外の理系学生が活躍できるフィールドも広がっています。


≪医薬品業界売上ランキング≫

1位:武田薬品工業 6位:中外製薬
2位:アステラス製薬 7位:大日本住友製薬
3位:大塚ホールディングス 8位:田辺三菱製薬
4位:第一三共 9位:塩野義製薬
5位:エーザイ 10位:協和発酵キリン

※2019年3月期


≪理系新卒採用実績がある医薬品業界の企業≫

武田薬品工業株式会社、アステラス製薬株式会社、第一三共株式会社、日本イーライリリー株式会社、バイエル ホールディング株式会社、久光製薬株式会社、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社、日医工株式会社、扶桑薬品工業株式会社、シオノギ製薬グループ、大正製薬株式会社、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、田辺三菱製薬株式会社、興和株式会社、協和発酵キリン株式会社、ゼリア新薬工業株式会社、エーザイ株式会社、小野薬品工業株式会社、アストラゼネカ株式会社、中外製薬株式会社、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、大日本住友製薬株式会社、株式会社ツムラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、ファイザー株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社、シミックヘルスケア株式会社 ほか

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