大手食品メーカーはアジアなど新興国での市場開拓に注力
食品・飲料業界のメーカーは国内外から原料を買い付け、加工食品(水産・冷凍食品、ハム・ソーセージ、即席めん、乳製品、製菓、パン)や調味料・食品原料、清涼飲料・酒類などを製造し、スーパーやコンビニエンスストアといった小売店を通じて消費者に販売しています。人々の日々の暮らしを支える食料品を提供しているため景気の影響を受けにくいと言われてきた食品・飲料業界ですが、国内市場は少子化や人口減少の影響もあって長期的には縮小傾向にあります。そのためグローバル展開によって売上拡大を目指すメーカーが増えており、多くの食品メーカーでは人口増加や経済発展が著しいASEAN諸国など、新興国での市場開拓を推進しています。
近年では味の素や日清食品、アサヒグループホールディングスなどが海外M&Aを加速させています。サントリーホールディングス傘下のサントリー食品インターナショナルはM&Aで強化した海外事業が売上の約半分を占めており、マヨネーズ・ドレッシング最大手のキューピーも中国市場を基盤に売上を伸ばしています。キッコーマンも海外における醤油需要の高まりなどを背景に営業利益の約7割を海外から上げるなど、世界各国で日本食の人気が高まっていることも追い風となっています。
消費者の健康志向でニーズが高まる健康食品・機能性表示食品
市場の縮小が予測されている国内市場でも、消費者の健康志向・安全志向の高まりを受けて健康食品や機能性表示食品など、成長している領域もあります。
機能性表示食品とは、健康の増進や維持機能を企業の責任のもとで表示している食品であり、生鮮食品やサプリメントなどを中心に広がりを見せています。乳酸菌の働きによる整腸作用が期待できるヨーグルト、カカオ成分が高くポリフェノールが多く含まれるチョコレートの人気が高いほか、脂肪と糖の吸収を抑制する機能や乳酸菌を配合したチョコレートも注目を集めています。
清涼飲料に関してもカロリーゼロや血糖値を下げるものなど、機能性の高い製品の売上が好調を維持。また、農薬・化学肥料を使わないオーガニック食品、人口保存料や人口着色料といった添加物を使わない食品へのニーズも高まっています。
ビール離れが進む中、大手各社が将来の税改正を見据えた施策を展開中
飲料市場において特に競争が激しいと言われるビール市場ですが、国内のビール系飲料出荷量は近年減少傾向にあり、消費者のビール離れが進んでいます。
一方で2018年4月からビールの定義が拡大され、これまでビールに使用できなかった柑橘類やハーブの使用が認められるようになりました。すでに大手各社はレモンなどの柑橘系素材を使った多様な風味のビールを続々と発表し、新たなビール需要の掘り起こしに挑んでいます。
2020年から段階的に見直されるビール減税に向け、大手各社は国内ブランドの集約を急ぐなど、ビール復権に向けた様々な施策を準備しています。
食品・飲料メーカーで求められる理系の学部/専攻・スキル・知識
食品・飲料業界では、研究職、生産技術、開発職、生産管理・品質管理、マーケティング/商品企画、営業など、幅広い職種で理系の学生が求められています。研究職に注目が集まりやすいものの、高品質で安全な食品をローコストで製造するための技術開発を手がける生産技術や、国内でも義務化が進められているHACCP(食品衛生管理の国際基準)の導入にも関わる生産管理・品質管理も食品・飲料メーカーの成長を支える重要ポジションといえます。
農学系、生物系、化学系の知識を活かせる職種が目立ちますが、工場や生産設備の開発・メンテナンスを担当するプラントエンジニア(設備エンジニア)など、機械系・電気系を専攻する学生へのニーズも高いです。総合職や営業、マーケティング、事務系の職種に関しては、専攻を問わず理系出身者を歓迎している企業が少なくないので、関心がある方は情報収集しておきましょう。
≪食品・飲料業界売上ランキング≫
1位:日本たばこ産業(JT) | 6位:日本ハム |
2位:アサヒグループホールディングス | 7位:味の素 |
3位:キリンホールディングス | 8位:山崎製パン |
4位:サントリー食品インターナショナル | 9位:コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス |
5位:明治ホールディングス | 10位:伊藤ハム米久ホールディングス |
※2019年3月期
≪理系新卒採用実績がある食品・飲料メーカー≫
日清オイリオグループ株式会社、日本水産株式会社、日清食品株式会社、山崎製パン株式会社、サントリービバレッジサービス株式会社、サントリーグループ、キユーピー株式会社、アサヒビール株式会社、アサヒ飲料株式会社、明治グループ、伊藤製パン株式会社、キッコーマン株式会社、ニッポンハムグループ、日本ハム食品株式会社、日本ハム株式会社、伊藤ハム米久ホールディングスグループ、株式会社Mizkan J plus Holdings(ミツカングループ)、サッポロビール株式会社、森永製菓株式会社、日清製粉グループ、エスビー食品株式会社、雪印メグミルク株式会社、ハウス食品株式会社、株式会社ロッテ、ネスレ日本株式会社、ニチレイグループ、プリマハム株式会社、ヤマザキビスケット株式会社、株式会社ヤクルト本社、フジパングループ本社株式会社、味の素株式会社、江崎グリコ株式会社、伊藤ハム株式会社、キリンホールディングス株式会社、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社、第一屋製パン株式会社、JT(日本たばこ産業株式会社)、フィリップモリスジャパン ほか
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