大手SIerを頂点としたピラミッド構造で成り立つIT業界
ITサービス業界はECサイトやクレジットカード決済システム、飛行機や新幹線の予約システム、企業で使用される業務システムや勘定系システム、官公庁や地方自治体で使用される各種申告システムや住民基本台帳ネットワークシステムなど、人々の暮らしや企業の活動を支える様々なシステムを開発することで社会を支えています。システム開発そのものをSI(システムインテグレーション)と呼ぶこともあるため、システム開発を担う企業は一般的にSIer(エスアイアー)やシステムインテグレーターと呼ばれています。
ITサービス業界では大手SIerが、顧客である企業や官公庁から案件を一括受注した後、企画や設計といった上流工程のみを担当し、実際の開発を手掛けるソフトウェア開発会社や情報処理会社に委託して進めるケースが多いです。元請けと下請け(協力会社)というピラミッド構造で成り立っているため、同じような構造を持つ建設業界に準えて、「ITゼネコン」と呼ばれることもあります。
ユーザー系、メーカー系、独立系の3種に分類されるSIer
SIerは、会社の成り立ちや特徴によって、ユーザー系、メーカー系、独立系の3種に大別できます。大手企業の情報システム部門から独立する形で生まれたユーザー系のSIerとしては、NTTデータや野村総合研究所(NRI)、伊藤忠テクノソリューションズ、日鉄ソリューションズ、電通国際情報サービスなどが代表的です。コンピューターやサーバーなど、ハードの製造からITサービスを派生させたSIerはメーカー系と呼ばれ、富士通、NEC、日立製作所、日本ユニシスなどが売上上位を占めています。ユーザー系とメーカー系のどちらにも属さず、システム開発を専門に行う企業が独立系SIerです。TIS、大塚商会、富士ソフト、ネットワンシステムズといった企業が広く知られています。
世界的な大手企業としてはIBM、アクセンチュア、DXCテクノロジー、ヒューレット・パッカード エンタープライズ (HPE)といった欧米系企業のほか、インドのタタ・コンサルタンシー・サービシズなどがあります。日本IBMや日本ヒューレット・パッカード など、本国企業の100%子会社を日本に設置している企業も少なくありません。
AIやIoT、クラウド、ビッグデータが成長のキーワード
ここ数年、ITサービス業界を賑わせていたマイナンバー関連のシステム開発や、メガバンクのシステム統合などが落ち着いたことで成長の鈍化も懸念されていましたが、企業のIT投資は依然として堅調な状態が続いており、2018年も前年比で1.6%売上が伸びているなど、6年連続で成長を続けています。
マーケティングや営業支援システムなど、売上向上を目的としたシステムのニーズが高まっているほか、今後はAIやIoT、ロボット、クラウド、ビッグデータといった先進技術を活用する案件、それらに関連したセキュリティ領域の案件も増えていくと見込まれています。その一方で業界全体における人材不足が深刻化しており、新たな人材の育成が社会的な課題となっています。
ITサービス(情報処理)業界で求められる理系の専攻・スキル・知識
ITサービス業界では幅広い職種で理系人材が求められています。システムエンジニア、プログラマー、インフラエンジニア(ネットワーク、サーバー、セキュリティ)、テクニカルサポート、カスタマーエンジニア、ITコンサルタント、データサイエンティスト、セールスエンジニア(技術営業)が代表的な職種であり、一定のプログラミングスキルや基礎知識を有していれば、学部や学科を問わないという企業が多いようです。
SIerの業務で使用される言語には、Java、C、C#、COBOL、VBなどがありますが、大手・中堅企業の多くは充実した教育・研修体制を整備しているため、入社後にスキルを習得することも可能です。ただし、データサイエンティストなどの一部の職種、先端技術開発に注力している企業では、AIやビッグデータ解析など、特定の技術領域における研究経験やアカデミックな専門知識を求められるケースがあります。
≪ITサービス(情報処理)業界売上ランキング≫
1位:富士通 | 6位:TIS |
2位:NEC | 7位:野村総合研究所 |
3位:日立製作所 | 8位:伊藤忠テクノソリューションズ |
4位:NTTデータ | 9位:SCSK |
5位:日本IBM | 10位:日本ユニシス |
※2019年3月期
≪理系新卒採用実績があるITサービス(情報処理)業界の企業≫
株式会社日立システムズ、キヤノンITソリューションズ株式会社、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、富士通株式会社、NECフィールディング株式会社、日鉄ソリューションズ株式会社(旧:新日鉄住金ソリューションズ株式会社)、TIS株式会社、SCSK株式会社、株式会社インターネットイニシアティブ、株式会社セントメディア、株式会社日立情報通信エンジニアリング、株式会社大塚商会、株式会社日立ソリューションズ、日本ヒューレット・パッカード株式会社、NECネッツエスアイ株式会社、みずほ情報総研株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、株式会社NTTデータ、株式会社野村総合研究所、日本ユニシス株式会社、NTTコムウェア株式会社、アクセンチュア株式会社 ほか
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