モルガン・スタンレー

今やITの恩恵を受けない業界・仕事は存在しない。中でも金融業界は特にITとのつながりが強い業界だ。金融取引の根幹をなすのは、まさしくITシステムそのもの。元来、数字を扱う業種ということもあり、金融とITとの親和性は非常に高い。金融業界は他業界と比べて早期からITの活用に取り組んできたという背景があり、近年も“フィンテック(FinanceとTechnologyを組み合わせた造語)”への注目が高まり続けている。今回は、グローバル総合金融サービス企業であるモルガン・スタンレーの情報技術部門にフォーカスを当て、理系IT人材がどのように活躍しているのか見てみよう。


PROFILE

佐藤雅子

モルガン・スタンレー
情報技術部 データセンター担当
青山学院大学大学院
理工学研究科 物理学専攻 博士前期課程 修了
佐藤雅子(さとう・まさこ)

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マイクロセカンドの世界でスピードを追求


金融業界において、ビジネスのスピードはかつてと比較にならないほど高速化している。ミリセカンド(1000分の1)やマイクロセカンド(100万分の1秒)での取引は当たり前。わずかでもライバルの先を行き、レイテンシー(遅延)をいかに短縮するかという激しい競争が世界中で繰り広げられている。

モルガン・スタンレーは、そんな熾烈な金融ビジネスの中でトップ集団を走り続けている世界有数のグローバル総合金融サービス企業だ。投資銀行、証券、ウェルス・マネジメント、資産運用事業など、その事業領域は多岐にわたる。

情報技術部で日本のデータセンターの責任者である佐藤雅子氏は、同社の特長としてシステムの自社開発体制を挙げる。モルガン・スタンレーはグローバル全体においてもシステム開発の大半を自社で担っているという。自社開発にこだわる理由は、開発スピードを高速化し、システムの機能拡張や追加に対して柔軟に対応するため。変化のスピードが速い金融業界ならではの体制といえるだろう。

「私は20年以上当社に在籍し、リーマンショックなどの様々な危機を経験してきました。それらの経験を踏まえても、危機に直面した際にいかに迅速に対応し、ソリューションを提供できるかが勝負の分かれ目になると感じています」(佐藤氏)


機械系や電気系も。様々な理系出身者が金融業界を支えている


取引システムやリスク管理システムを構築するモルガン・スタンレーの情報技術部では、機械学習やデータサイエンスを駆使したアプリケーションの開発、顧客情報や銘柄情報などの膨大なデータ管理、アプリケーションを安定的に稼働させるためのインフラの構築・運用、ITリスクの管理を行う部門などが存在している。

ITエンジニアの業務と言えば、一般的にプログラミングやアプリケーション開発がイメージされやすいが、金融業界では幅広い領域でITエンジニアが必要とされている。例えば、絶対に止まることが許されない堅牢な基盤、高度な情報セキュリティ、法律や規制に対する適切な対応など、いずれもビジネスにおける重要度は高い。中でも佐藤氏が担当するデータセンターの使命は、24時間365日、安定的にシステムが稼働できるよう適切に管理運用することだ。既存の設備のメンテナンスのみならず、膨大な取引やマーケットなどの情報を処理できるようネットワークを更新し、セキュリティの強化やデータスピードの向上にも取り組み続けている。社内のあらゆる部門と接する機会があり、ビジネスの成長に貢献できる点がデータセンターの魅力だという。

また、一般的な情報系の知識だけではなく、様々な知識が求められるのも金融業界の特徴だ。例えばデータセンターを維持するには、機械・電気工学、情報通信技術などの知識も必要となる。在学中に物理を学んでいたという佐藤氏も、「データセンターで働き始めることで、再び機械・電気工学などの知識に触れることになりました」と語る。事実、同社のデータセンターでは機械系や電気系などのバックグラウンドを持った社員が活躍しているという。


変化の激しい世界だからこそ、学ぶ姿勢が不可欠になる


金融業界のITエンジニアとして働く上で、理系学生にはどのような素養が求められるのだろうか。各業務においてITの知識が必要なのは言うまでもないが、それ以上にロジカルシンキングや主体的に問題に取り組む姿勢といったマインドも重視されている。

佐藤氏は、「専門知識は後から習得可能なので、就職活動の時点であまり捉われすぎる必要はない」と語る。最も重要な素養は、高いモチベーションやチームワークに必要な協調性だ。ITエンジニアの世界では、今ある知識はすぐに古びていき、常にアップデートしていくことが求められる。また、金融業界の大規模なシステムは到底ひとりで作り上げられるものではなく、必然的にチームワークで取り組むことになる。

フィンテックというキーワードが大いに盛り上がる昨今、金融業界は過渡期にある。ITによって金融業界のあり方は大きく変わったが、テクノロジーの進化に伴い、再び大きな変化が訪れようとしている。業界の垣根がなくなり、次々と新しいビジネスモデルが生まれていく中で、ITエンジニアが果たす役割はますます大きくなっていくだろう。理系の本質的な素養を活かしながら新しいことを学びたい、変革期にある業界で働きたいというIT人材にとって、金融業界は魅力的な舞台と言えるだろう。