弁理士・知的財産部門の具体的な仕事内容や業務のやりがい、新卒採用で求められる応募資格(学部・専攻など)や採用実績のある企業などを解説します。理系が活躍できる弁理士・知的財産部門の魅力とは。
弁理士・知的財産部門の仕事内容とは
近年注目を集めている特許権や商標権、意匠権といった「知的財産」を取り扱う専門職です。自社やクライアントの知的財産権の適切な管理を行うために、独自技術の特許権取得や様々なライセンスの管理を行うほか、他社の特許を侵害していないか、あるいは自社の特許が他社に侵害されていないかといった調査も行います。
働き方としては、企業内の知的財産部門や法務部門で社員として活躍するほかに、特許事務所に所属してクライアントからの仕事を請け負うという働き方もあります。企業内で働く場合は、競合他社の特許調査や技術調査、研究開発部門から提案されたアイデアの新規性調査、特許戦略の立案なども併せて担当することになります。また、特に先端技術に関する知的財産権を担当する職種をパテントエンジニアと呼ぶ企業もあります。
グローバル企業では国際出願に関する業務が増えている
知的財産権は国ごとに権利が発生する「属地主義」という考え方に基づいており、日本国内で特許権や商標権を取っていても、そのまま海外で使えるわけではなく、国ごとに権利化の手続きを進める必要があります。昨今、海外における知的財産権の保護は多くの企業にとって非常に重要なテーマとなっており、特にグローバル展開を強化する国内メーカーを中心に国際出願が急増しているため、出願を担当する弁理士、知的財産担当者も日常的に英語を使う場面が数多くあります。
弁理士・知的財産部門に求められる専攻・スキル・知識
メーカーの知的財産部門や特許事務所は幅広い理系出身者に活躍のチャンスがありますが、特に機械・電気系と情報系の特許出願が多いため、両分野の専門知識を有する人材へのニーズが高いと言えるでしょう。弁理士資格を入社時点で取得していなくても知的財産部門などで採用を行っているケースもありますが、将来的には弁理士資格の合格が期待されます。
しかしながら、国家資格である弁理士は資格試験の難度が非常に高いことでも知られており、実際に平成29年度の合格率は6.5%と狭き門となっています。そのほか、弁理士・知的財産部門に求められるスキル・能力は、新しい技術を理解する力、技術を抽象化(新しい技術や製品の本質的な価値を見出すスキルなど)する力であり、それらを支える理系全般の知識・論理的思考力、さらには申請書類を書くための文章力などが挙げられます。また、グローバル展開を推進する企業を中心に国際出願に関する案件が増えているため英語力はほぼ必須であり、英語と併せてアジア圏など新興国の言語を使えると仕事の幅が広がるでしょう。
弁理士・知的財産部門の仕事のやりがい
グローバル戦略を推進する多くのメーカーにとって、特許権、商標権、意匠権といった知的財産権は重要な経営資源です。新興国で特許の管理方法を誤れば、偽造品の氾濫によって有望なマーケットを丸ごと失ってしまう可能性もあります。また、競合他社の特許権調査が不十分であれば、特許侵害などによって巨額の賠償金を請求される可能性もあるでしょう。
弁理士・知的財産部門の仕事は、自分の手掛けた案件が特許として認められることに加え、技術や特許に関する知識、語学スキルなどを活かして企業が有する知的財産権の適切な管理を支え、企業の継続的な事業成長に大きく貢献できるという醍醐味があります。
弁理士・知的財産部門において出身者が多い学部学科
弁理士や知的財産部門として活躍しているのは理系の様々な専攻領域にわたっています。中でも機械・電気系や情報系の特許出願が多いため、両分野の専門性を有する人材へのニーズが高くなっています。
弁理士・知的財産部門の採用実績がある企業
日立グループ、ソニーグループ、パナソニック、本田技研工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社ブリヂストン、富士フイルム株式会社、キヤノン株式会社、旭化成株式会社、住友化学株式会社、日立化成株式会社、株式会社ジャパンディスプレイ、ルネサスグループ、京セラ株式会社、セイコーホールディングスグループ、シチズングループ、オリンパス株式会社、セイコーエプソン株式会社、味の素株式会社、ヤマハ株式会社、三菱自動車工業株式会社、富士通株式会社、三菱電機株式会社 ほか多数
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