成長戦略の中核は「女性の活躍」

「女性の活躍」「ダイバーシティの推進」といった言葉をニュースなどで耳にすることが多くなりました。少子高齢化による労働人口の減少、グローバル化の進行など、日本経済はビジネス環境の大きな変化に直面しており、旧来の考え方や組織体制のまま企業が戦い続けることは難しくなってきています。この問題を解決する一つのカギとなるのは、多様な人材を登用するダイバーシティの推進、中でも女性の活用なのです。

政府も「女性の活躍」は国家戦略上の重要なテーマと考えており、安倍首相はアベノミクスにおける成長戦略の中核として「女性の活躍」を据え、経済界を後押ししています。これを受け、女性の採用・登用を積極化する企業が増えており、中でも理系人材が多く活躍しているメーカー、IT、インフラ、建築といった業界はもともと男性社員の比率が高かったこともあって女性が働きやすい制度改善や環境整備に取り組んでいる企業が増えています。理系女性にとっては多様なキャリアを選択できるチャンスが広がっているといえるでしょう。

●図1 国別管理職・役員における女性比率

●図1 国別管理職・役員における女性比率

本当の意味での“機会均等”に向け、本格化する女性の活用

1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから女性の活躍の場は増えてきたとはいえ、現在でも社員・役職者の女性比率は均等とは言い難いのが実情でした。日本において管理職に就く女性の比率は海外と比較しても低く、欧米の約4割に対して日本は約1割に過ぎません。会社役員における女性比率はさらに低く、欧米の平均が11%に対して日本は1%にとどまっています。

しかし、その流れは大きく変わろうとしています。多くの企業が女性の活用を明言し、管理職の女性比率・人数を目標設定するなど積極的に女性を登用する動きがいよいよ本格化しています。

日立製作所はグローバル市場で競争力を高めていくためには「ダイバーシティの推進」が欠かせないと考え、その一つとして2020年度までに女性管理職を現状の2・5倍となる1、000人を目指すという目標を設定しました。その他にも、「女性活用」における明確な目標を掲げ、本腰を入れて社内の環境整備や意識改革に取り組む企業が増えているのです。(※図2)

●図2 女性管理職比率の目標値を掲げている企業の一例

日立製作所 2020年までに女性管理職を1000人に。
野村證券 2020年までに女性マネージャーの人数を550名に
第一生命保険 2018年4月に女性管理職比率を25%以上に。
2020年代のできるだけ早期に30%以上を目指す。
野村総合研究所 2022年度までに上級専門職の女性比率を2014年度比2倍

女性が活躍する企業は業績も好調?

経済が右肩上がりの時代、「共通した属性の社員を集めて、同じ方向を向いて邁進していくのが効率的」と企業は考えていました。しかし、ビジネスの仕組みが複雑化し、消費者の志向が多様化する昨今においては、多様な価値観による発想力や変化に対する柔軟な対応力が企業には求められています。また、当然ですがマーケットにおけるユーザーの半数は女性。製品の企画・開発の場面などで、女性の視点をはじめとした多様な発想・観点が不可欠となってきているのです。

実際、女性活用に積極的な企業ほど業績がいいという調査データもあります。21世紀職業財団が実施した「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」では、5年前と比較して女性管理職が増えた企業と減った企業の売上指数は大きな差がついており、「女性の能力発揮促進や管理職登用が進んでいる企業ほど業績は良い」と結論付けています。

今後も様々なフィールドで理系女性への期待が高まっていくでしょう。「この仕事は男性ばかりだから」「この業界は女性の働ける環境が整ってないのではないか」といった先入観を持つことなく、興味を持った業界・企業について調べてみてください。きっと、新しいキャリアの可能性が拓けるはずです。

●図3 女性社員の活用と経営業績の関係例 ※=5年前の売上を100とした場合の現在の売上高

自社の評価   売上指数(※)
女性の能力発揮促進の取り組みに関する自己評価 進んでいる   111.5
ある程度進んでいる   112.9
あまり進んでいない   106.8
進んでいない   97.8
5年前と比較した女性管理職比率の変化 大幅に増えた   173.7
やや増えた   110.9
現状維持   102.6
やや減った   93.1
大幅に減った   83.5

出典21世紀職業財団「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」より




理系女性の就職&会社選びについての疑問

「理系女性がキャリアを考える際に意識すべきことは?」
「出産や育児をしながら働き続けられる会社はどうやって見つければいい?」
「女性にとっていい会社ってどんな会社?」
本格的に就職活動が始まる前に、皆さんが考えておくべきことや知っておくべきことは少なくありません。理系女性がキャリアや仕事について抱く疑問についてお答えします。

出産・育児をしながら長く働ける会社を探すために、確認すべき点は?

出産や育児に関する制度の有無や充実度を重視して企業をチェックしている女子学生は多いですが、それだけでは十分とは言えません。企業の担当者に出産・育児休暇の有無について質問している方をしばしば見かけますが、出産・育児休暇はすべての企業に法律で義務付けられている制度です。(企業によって休暇を取得できる期間の違いはあります)

それよりも重要なのは、その企業内で制度がどれくらい活用されているかという実態です。せっかく制度が整えられていても、実際に利用している社員がいなければ意味がありません。出産・育児休暇を取得後に復帰して活躍している女性の人数・比率や具体的なエピソードまで聞くことができれば、その会社で働くイメージが見えてくるはずです。

女性が活躍できる会社って、どんな会社?

混同しやすいのですが、女性が“活躍できる会社”と“働きやすい会社”がイコールとはかぎりません。女性にとって居心地は良いものの任される仕事は補助的な業務が多いという企業もありますし、その一方で仕事はハードながらも評価に関しては全く平等という企業もあります。

あなたがビジネスパーソンとしてキャリアをしっかり歩んでいきたいのであれば、「性別にかかわらず重要な仕事を任せてもらえるか」「責任あるポジションに女性が登用されているか」といった実態をしっかり見極める必要があります。女性の活躍の度合はデータだけでは見えてこない部分も少なくないので、OG訪問をするなどして、先輩女性社員の話を聞くことをおすすめします。

将来は結婚して家庭に入ろうと考えているので、キャリアについてあまり考えなくても大丈夫でしょうか?

結婚、出産、育児など女性には様々なライフイベントがありますが、いずれも不確定な要素が大きいことも事実です。

例えば結婚は良いパートナーと出会えるだけでなく、生活スタイルや価値観を共有できなければ、家庭に入ることは難しくなります。

さらに近年では雇用の流動性が増しておりパートナーの雇用が一生安定しているとも限りません。 ですから、女性自身もキャリアをしっかり考えることは欠かせないのです。自分自身のキャリアや仕事としっかり向き合うことが、将来の可能性を広げることにつながるはずです。

女性が長期的なキャリアを築くために意識すべきことは?

女性はライフイベントによって仕事に割ける時間が少なくなる可能性があります。ですからキャリアを築いていくうえで、なるべく早い段階で仕事の基盤を作り、実績を残すことが重要といえます。とにかく目の前の仕事にしっかり取組み、一定の評価を得て、会社や組織にとって価値のある人材になることで、キャリアの選択肢は増えるはずです。

ワーキングマザーの多くは産休復帰後に「仕事の効率を強く意識するようになった」と言っています。「限られた時間でいかにして成果を上げるのか」を強く意識して仕事に取り組んでいるのですが、休暇を取得する前に基盤を作っていなければこれを実行するのは難しいといえるでしょう。

就職活動に臨む前に考えるべきことは?

女性だけに限ったことではないのですが、自分はどんな人生を歩みたいのかを真剣に考えることが欠かせません。「グローバルに活躍できるプロフェッショナルを目指す」「地元でワークライフバランスを重視して過ごす」—生き方は十人十色、正解はありません。しっかり自分自身と向き合い、その目的を実現できそうな環境を見つけてください。

とはいえ、学生の時点で将来像を明確に描けない方も少なくないでしょう。そんな場合はできるだけ社員と肌の合う会社、女性が活躍している会社を選ぶことで将来の選択肢を増やすことができるでしょう。実際に働き始めてから仕事や生き方に対する考えが変わっていくのはごく自然なことです。社会に出ていろんな人や価値観と触れ合う中で目指すべき姿を見つけてください。