社会インフラを担うエネルギー業界。電力・ガスの自由化で競争激化

国内石油元売り大手は3社体制に。電力・ガスは自由化で業界構造が変化

エネルギー業界の企業は、国家・企業・人々の日々の活動を支えるエネルギーを多様な形で社会に供給しています。エネルギー業界は、石油、電気、ガスの主要3分野を指すことが多いですが、広義には太陽光、風力、バイオマス、地熱発電といった再生可能エネルギー、水素エネルギーなどを開発・提供する会社も含まれます。

石油に関わる企業は、世界各地で原油や天然ガスの油田開発や採掘を行う「開発会社系」と原油の精製・販売を行う「石油元売り系」に大別できます。国内の開発系会社では国際石油開発帝石（INPEX）や石油資源開発（JAPEX）が大手となりますが、グローバル市場ではロイヤル・ダッチ・シェル、エクソンモービル、BPといった欧米の資源メジャーが存在感を示しています。石油元売り系ではJXTGホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングス、昭和シェル石油が上位を占めていましたが、2019年4月に出光興産と昭和シェル石油が経営統合したことにより、国内大手は3社体制に移行しています。

電力供給は発電所で発電した電気を送配電網によって家庭やオフィス、工場に送るサービスであり、ガス供給は液化天然ガス（LNG）から作るガスを供給する都市ガスと、ボンベに詰めた液化石油ガス（LPG）を供給するLPガスの2種類があります。電気とガスに関しては、調達・輸送・小売までを地域独占で一貫して行う会社がほとんどでしたが、小売自由化の影響によって業界構造やビジネスそのものが大きく変わりつつあります。

電気・ガス大手は業界や地域を超えた販売・資本提携を推進

東日本大震災の原発事故を契機に、電力供給の多様化や自由競争による電気料金引き下げへの関心が高まり、電気・ガスシステムの改革がスタートしました。2016年4月に電力小売の全面自由化、2017年4月には都市ガス小売が全面自由化され、商社や石油元売り、通信会社、リース会社など、業界を問わず多くの企業が新規参入し、電気とガスのセット割引やポイントの付与など、多様なサービスを展開して売上を伸ばしています。電力は2020年に発送電事業の分離、ガスは2022年に導管事業の分離が行われるため、より多くの企業が新規参入しやすい状況になるでしょう。

このように電気・ガス分野では自由化による競争が激化しているため、既存の大手各社もさまざまな手段で対抗しています。東京電力ホールディングスと中部電力は火力発電事業を統合し、原子力発電所が再稼働する関西電力は電力料金の値下げに踏み切りました。また、中部電力と大阪ガスは首都圏で電力と都市ガスを販売する共同出資会社を設立するなど、業界や地域を越えた販売提携や資本提携が活発化しています。

再生可能エネルギーの現状と新たなテクノロジーによる技術革新

太陽光発電や風力発電、バイオマス発電、地熱発電などに代表される再生可能エネルギーは、環境意識の高まりや将来予想されている化石燃料の枯渇を受け、先進国を中心に世界規模で導入が進められています。

日本国内では買取価格の引き下げなどによって投資意欲の減退が見られたものの、ソフトバンクグループはサウジアラビアと共同で太陽光発電に巨額の投資を行う覚書を締結。東京電力ホールディングスも再生可能エネルギーに積極投資して10年後には火力発電に匹敵する収益規模に育てていく方針を打ち出すなど、大手企業を中心に積極投資を進める動きが出てきています。

また、電力分野を中心に新たなテクノロジーの導入によって、効率的なエネルギー供給を目指す取り組みが進められています。AIやIoTの導入によって効率的な発電・送電を実現するスマートグリッド、使用者間で電力を取引するためのデータ管理を行うブロックチェーン技術、余剰電力を貯めておくための蓄電池（EV）など、多くの技術領域で研究開発が進んでいます。

エネルギー業界で求められる理系の学部／専攻・スキル・知識

各社の事業内容にもよりますが、エネルギー系企業では機械、電気・電子、情報・通信、化学、材料、建築・土木、原子力など、幅広い専攻の理系人材が求められています。職種としては研究職、技術系職種、サービスエンジニア（フィールドエンジニア）、システムエンジニア、調達、営業などがあり、大規模設備の開発やメンテナンスを担当するプラントエンジニア（設備エンジニア）の担い手として、機械系や電気系、建築・土木系専攻の学生に対するニーズが特に高い状況です。また、地質調査や堀削といった資源開発に携る職種では、資源工学や土木工学を専攻する学生が求められています。総合職や営業に関しは、専攻を問わず理系学生を歓迎している企業が多いようです。