理系ナビ 理系のための就活サイト

メニュー
理系の就職活動&インターン準備お役立ち情報 就活ガイド

北海道大学 キャリア支援シンポジウム2026 イベントレポート


学部から博士まで、非線形に生きるキャリアのロードマップ

生成AIの急速な普及とともに、社会が大きく変化する中で、博士人材への期待は確かに高まりつつある。しかし現実には、博士課程への進学者数は減少傾向にあり、ポストや処遇をめぐる課題も依然として残る。大学と産業界の双方がその課題に真剣に向き合い始めている。

そうした背景のもと、2026年3月10日(火)、北海道大学 学術交流会館にて『北海道大学 キャリア支援シンポジウム2026』が開催された。博士課程学生の支援を行う先端人材育成センターと、主に学部生・修士学生を支援するキャリアセンターが共同で主催した本シンポジウム。今回で2回目の開催となり、企業・他大学・就職支援会社を含め、当日は全国から157名もの参加者が集まった。

今年のテーマは「学部から博士へ:一貫したキャリア教育と非線形なキャリアの可能性」。博士人材をはじめ、学部や修士を含めたキャリア形成を多角的に議論する濃密な一日となった。


博士人材の育成に向けた、大学と社会のコミットメント

開会にあたり、北海道大学 寳金清博総長より挨拶が述べられた。「博士号取得者を3倍にするには十数年単位の取り組みが必要だ」としつつ、社会が本当に博士人材を必要としているのかを問い直しながら、今後4年をかけて大学教育の開拓と社会との連携に真剣に向き合っていく意向が示された。

続いて、文部科学省 高等教育局 大学振興課の永見浩輔 大学院振興専門官が登壇し、大学院教育の過去・現在・未来を3つの視点から語った。

まず、これまでの大学院教育の歩みを振り返りつつ、現在の状況として人口減少に伴い博士を目指す学生が減少している実態を示した。一方で、社会人博士の学生の割合が2割から4割へと増加しており、この層が博士人材を増やす上での重要なポイントになるとの見解が述べられた。今後については、「大学院で培った能力を活かし、生成AIの普及や少子化といった不安定な社会を牽引していく力が期待される」と語り、博士人材が社会変革の担い手となることへの期待を示した。


北海道大学 寳金清博総長の挨拶

パネルディスカッション第一部:各パネリストのポジショントーク

今年のパネルディスカッションでは、私立大学と国立大学でそれぞれキャリア支援を行う教員2名、企業のR&D部門で高度専門人材の採用や人材開発を担う民間企業の人事、そして学部・修士・博士学生が記者として活躍するメディアのHR室長を迎え、それぞれの立場からの取り組みが紹介された。

日経BPの佐原加奈子 執行役員・HR室長からは、入社者の約4割が理系出身であり、博士課程修了者が多く活躍している実態が共有された。高度な専門知識を分かりやすい言葉に置き換えて伝える力の重要性も強調され、専門性だけでなく発信力が求められる時代であることが示された。

富士通 Employee Success本部 R&D人事部の輿秀和 シニアマネージャーからは、現在441名もの博士人材が社内で活躍しているという数字が示され、産業界における博士人材の受け皿の広がりが印象づけられた。

北海道大学キャリアセンターの亀野淳 センター長からは、文系は学部卒業後に就職、理系は修士修了後に就職するケースが多いという傾向が紹介された。また、学部1年生を対象とした進路意識調査では、理系学生のうち「学部卒業時点での就職を希望する」と答えた割合はわずか11%にとどまり、27%が「まだ決めていない」と回答。早期からのキャリア支援の必要性が改めて浮き彫りとなった。


ポスターセッション・コーヒーブレイク

昨年好評だったポスターセッションは、参加者からの「時間が足りなかった」という声を受け、今年は90分開催に延長。さらに、開会前からポスター会場をプレオープンする形で実施された。

北海道大学14組織の取り組み、全国7大学の取り組み、就職支援会社からの4件のポスターが出展され、理系ナビをはじめとするリクルーターや大学関係者が博士人材のキャリアや各組織のキャリア支援の取り組みについて語り合う場となった。出展者への質問のほか、出展者同士・参加者同士の交流も盛んに行われ、立場を超えた意見交換が積極的になされた。


ポスターセッション・コーヒーブレイク

パネルディスカッション第二部:「非線形なキャリア」の可能性を議論

パネルディスカッション第二部:「非線形なキャリア」の可能性を議論

モデレーターを北海道大学先端人材育成センター長・吉原拓也教授が務め、4名のパネリストによるディスカッションが展開された。テーマは「一貫したキャリア教育と非線形なキャリアの可能性」。

北海道大学では「学部から博士まで一貫したキャリア教育」に取り組んでいる。北大生は道外からの学部入学者が約7割と全国から多様な背景を持つ学生が集まっており、大学院から編入してきた学生や海外留学経験を持つ学生も多い。そうした多様性を前提に、積み上げ型にとどまらない柔軟で包摂的なキャリア支援の在り方が熱く議論された。

法政大学の梅崎修 教授は「苦手なことをやれと言うのではなく、ジョブクラフティングの視点が必要だ」と述べた上で、博士人材のキャリアについて三つの方向性を示した。一つ目は、専門性の高い博士人材を大学・企業の双方で引き続き支援すること。二つ目は、専門性に加えて横展開できる可能性を持つ博士人材の在り方の模索。そして三つ目として、「アウェイ感覚」を経験できる場の必要性が訴えられた。目の前の研究や業務だけに没頭し続けると視野が狭まり、キャリアとしての広がりを失う「専門性の罠」に陥るリスクがある。自分とは異なるバックグラウンドを持つ人々との交流や多様な業務への関与が不可欠だという指摘は、会場参加者にも深く響いていた。


まとめ:情報過多の時代だからこそ、視野を広げるキャリア設計を

ディスカッション全体を通じて、大学においてもキャリアを考える際には視野を広げることの重要性が改めて確認された。一方、情報が溢れる現代において、学生自身が視野を広げつつ、「何が自分に向いているのか」を見定めることの難しさも議論に上がった。輿氏は「学生がキャリアを体系的に整理していくために、企業側も個別面談などの機会を積極的に設けることが必要だ」と述べ、企業側からの歩み寄りの重要性を示した。

北海道大学のキャリア支援センターの取り組みとしては、今年4月より「教育イノベーション」の枠組みのもと、学部生から博士課程まで一貫してキャリアを見守る支援体制のための「キャリアデザインセンター」が発足。途中から入学した学生へのサポートも視野に入れた、より包括的なキャリア支援の在り方が模索されている。

閉会の辞では、北海道大学 山本文彦理事・副学長から感謝と総括が述べられ、学部から博士まで一貫した支援体制の強化に向けた取り組みへの言及もあった。


懇親会:立場を超えた対話が生んだ、リアルな交流の場

懇親会:立場を超えた対話が生んだ、リアルな交流の場

シンポジウム終了後は、北海道大学構内のカフェにて懇親会が実施された。民間企業、大学関係者、リクルーターといった多様な立場の参加者が一堂に会し、博士人材の育成・採用・支援について意見を交わした。

懇親会後半には、東日本旅客鉄道株式会社 人財戦略部の坂本泰氏から、昨年のシンポジウム参加をきっかけに採用にも大きな変化をもたらしたとのコメントが寄せられ、 某自動車メーカーの現場社員からも「非常に貴重な機会だった。来年もぜひ参加したい」との声が聞かれた。

2年目にして全国からの参加者157名を集め、さらなる盛況を見せた本シンポジウム。大学と産業界、そして学生が互いの現実を理解し合いながら、博士人材の新たな可能性を切り拓く場として、その存在感を着実に高めている。



理系ナビ登録促進バナー_28