ウェブ面接、オンラインインターンシップ、WEB説明会、といった新卒就活のWEB化が加速しています。WEB就活とは、インターネット上で行われる会社説明会、セミナー、面接、インターンシップなどの総称です。従来型のリアルな会社説明会や面接が、感染予防の観点から実施が難しくなったため、企業は新卒就活における選考プロセスのWEB化を急速に推進しています。とはいえ、企業および就活生にとってオンラインで行うWEB面接やWEBインターンシップのノウハウはまだまだ経験値が少なく、トラブルや課題は少なくありません。本記事ではウェブ就活における注意点や選考対策・準備について解説します。
《WEB就活(面接/説明会/インターンシップ)のチェックポイント》
【1】WEB面接/説明会のメリット、活用法
【2】WEB就活の対策・準備の注意点≪準備編≫
【3】WEB面接の対策・準備の注意点≪対策編≫
【4】WEB就活の注意点/懸念事項
WEB就活の浸透による就活生側のメリットを端的にいうと、「会社説明会や面接への参加機会が広がる」という点が筆頭にあげられます。従来のリアルな企業説明会/セミナーでは「満席で参加できない」というケースは珍しくありませんでした。会場のキャパシティが決まっている以上、これはやむを得ないのですが、そのせいで「企業と接点を持てず、次の選考ステップに進めなかった」という機会損失は珍しくありませんでした。
一方、WEB説明会やオンラインインターンシップであれば、参加できる可能性は圧倒的に高まります。参加者とのコミュニケーションを重視するプログラムなどは、WEBセミナーでも人数制限を設定しているケースもあるものの、それでも参加のチャンスが広がるのは間違いありません。さらに、居住地や移動時間といった制約もなくなるので、「首都圏の会社説明会に参加したい地方在住学生」や「研究室の拘束時間が長く、隙間時間での就活が難しい理系学生」といった就活生でも、WEB会社説明会やWEBインターンシップ参加のチャンスが広がります。
就活生にとって大きなメリットがあるWEB就活ですが、利用にあたって注意点や準備しておくべきことも少なくありません。次の項目からはWEB就活の注意点を紹介します。
WEB就活に取り組むにあたり、WEB説明会やオンライン面接に臨んでも問題がない、安定したインターネット通信環境を準備する必要があります。インターネットにおけるデータ通信環境を評価するうえで、主に確認するポイントとして、“通信量(通信制限)”、“通信速度”、“安定性”の3つが挙げられます。
まず、“通信量(通信制限)”については、通信量の多い動画コンテンツを閲覧しても問題のない契約プラン/環境であることが欠かせません。WEB説明会や面接といった動画の送受信を伴う通信は、特に通信量が大きい行動です。そのため、通信量に制限のない自宅回線のWiFiを利用したり、スマホでも「使い放題」や「大容量」のプランを契約したりするのがおすすめです。通信量に制限のある契約プランでは、一定以上の通信を行うと高額な通信料金を請求されたり、通信速度に制限がかけられてしまうケースがあるので注意が必要です。スマホの契約プランでは3~5GB/月のプランを契約しているユーザーが多いですが、3~5GBでは動画を頻繁に閲覧すると、すぐに“ギガ死”してしまいかねません。(例:YouTubeの高画質モード90分閲覧で1GB程度の通信量)。
通信速度についても、一定以上の速度が安定的にでなければ「WEB面接で画面が止まってしまう」といったリスクが考えられます。大学でも多く使用されているWEB会議ツール『ZOOM』の推奨通信速度は、高品質ビデオ通話で600kbps(HDビデオ通話で1.2Mbps)、『YouTube』は高画質で1.0Mbps(HD画質で2.0Mbps)が目安となっています。WEB説明会や面接を行う際に2.0Mbps程度の速度は最低限必要といえるでしょう。大手通信キャリアのスマートフォンを契約している場合、平均速度は50Mbpsなので基本的にはそこまで心配する必要はなさそうなのですが、時間帯や場所(人が密集しているエリア)によって通信速度が大幅に低下するケースもあります。固定回線(WiFi)でも、利用者が集中する時間帯に速度が低下することがあり、特に昨今は外出自粛により家で過ごす人が多くなっているため、マンションなどでインターネット接続が集中して通信速度が低下している事例もあるので注意してください。
最後に通信の“安定性”ですが、WEB面接の途中で通信が途切れるのは致命的です。安定性については、固定回線(光回線など)>モバイル回線(スマホやモバイルWiFiなど)なので、固定回線を利用するのがベストです。とはいえ、固定回線の利用が難しい場合は、モバイル回線でも自宅の中で電波状況のより良い場所をチェックしたり、場合によっては自宅外でWEB就活ができる環境を探しましょう。
WEB面接を行う場合は、撮影に適した背景・環境を整えることも求められます。具体的には、シンプルな背景で明るさがあり、雑音が入らない場所が推奨されます。家族と同居している場合は生活音が入ってこないように事前にお願いし、生活感のある背景が写り込まないようにセッティングを行いましょう。
大学のオープンスペースやネットカフェでWEB面接を行っている就活生を見かけたという話を聞きますが、不特定多数の人が行き来する場は雑音が入る可能性が高いうえに、個人情報漏えいのリスクがあるので絶対に避けてください。どうしても自宅以外の場所でWEB就活を行う必要があれば、不特定多数の人間が出入りしにくい静かな空間を探しましょう。個室のコワーキングスペース/レンタルスペースであれば、1時間単位で数百円程度から使用可能な場所もあります。
企業によって、WEB面接で利用するアプリ/ツールを指定される事があるので、本番までに使用予定の機材(パソコンやスマホ)が要求される動作環境(OSやプロセッサなど)を満たしているか確認しておきましょう。
WEB面接では、設定ミスで「声が聞こえない(届かない)」といったトラブルは少なくありません。使用端末にWEBカメラやマイクが備えられているか、また問題なく使用できるよう設定されているかも事前に確認しましょう。端末の音声が聞き取りにくく、イヤホンやヘッドセットを利用せざるを得ない場合は、面接の冒頭で担当者に一言断りを入れるのが無難です。
カメラの位置は自分の目線と同じくらいの高さにし、上半身が映るくらいの適度な距離で、動かないようにしっかり固定しましょう。カメラ位置が目線より低いと、上から見下ろすアングルで映ってしまい、相手を見下している印象を与えてしまいます。
WEB説明会の場合、質疑応答の場面以外はマイクをオフにしていた方が無難です。企業側がプレゼン時に強制的に参加者のマイクをオフにしているケースもありますが、企業担当者が話しているシーンで参加者の生活音や家族の話し声が入り込み、関係者全員に聞こえてしまうといったハプニングも実際に起こっています。
WEB面接とリアルな面接の違いで注意しなければいけないのは、「相手の表情の機微を読み取りにくく、感情を把握しにくい」という点です。表情の変化やリアクション(頷きなど)、合いの手、などはWEB画面を通じてでは察することが難しく、「いまの話に興味があるのか」「理解してくれているのか」といった判断の難度が高まります。これは学生側だけでなく、面接担当者も同様ですので、WEB面接の際は普段よりも感情表現を豊かにする(声のトーンや表情など)ことを意識して話しましょう。
先の項目でお伝えしたように、WEB面接では表情や身振り手振りといった非言語の情報量が減少してしまうため、通常の面接よりも「話す内容」の重要性が高まります。面接担当者も話に集中しているため、実施の面接よりも無駄を省き内容を洗練させる必要があります。WEB面接では通常の面接より、設定時間が短いケースも少なくないため、伝えるべきことの優先度を意識し、話の内容を洗練させましょう。
WEB説明会/WEBセミナーであれば、自分の姿を映さずに参加できる場合もありますが、WEB面接では当然ながら服装や身だしなみの準備も必要となります。「服装自由」の記載がない場合は通常の面接同様、スーツ着用が無難です。髪型なども整えて対面の面接と遜色がない身だしなみで臨みましょう。
就活生の中にはカンニングペーパー(カンペ)をモニター(スマホ)脇においてWEB面接に臨んでいる方がいるようですが、お勧めしません。経験豊富な人事担当は、不自然な目線の動きや話し方などからカンペの利用に気付く可能性があります。実際、人事担当者から「カンペの利用がバレバレだった」というWEB面接の話を聞いたことがあり、そのような学生に対する評価は言うまでもありません。対面面接ではカンペを利用できないので、WEB面接でも対面を想定した面接準備をしておきましょう。
人と人との接触が限定される昨今の就職活動における情報収集手法はWEBが中心となっており、情報収集における難易度が高まっているといえます。WEBにおける情報は一方通行であるケースが多く、リアルな会社説明会やOBOG訪問の機会がなくなると双方向性のある情報収集の場が少なくなります。質問ができるオンライン説明会でも、前述したように参加者が多いために質問に答えてもらえる可能性は減少するでしょう。また、社員に「顔」を覚えてもらえる機会も減ります。
また、情報の「質」の違いも見逃せません。WEB説明会など、誰でも見られる環境での情報発信は汎用的なコンテンツになりがちです。一方で対面した参加者のみに対して発信できる場であれば、いわゆる「ぶっちゃけトーク」や「社外秘ギリギリのプロジェクト情報」といった内容を話しやすくなります。その他にも、対面することで見えてくる「会社の雰囲気」「社員の人柄」といった要素もあるでしょう。
さらに、就活における情報収集手段の一つとして重要な「“就活仲間”を作りにくい」、「友人と気軽に情報交換し辛い」という就活生の声も上がっています。
WEB就活が中心になると就活生の情報収集における活動パターンが大きく変化することが考えられます。例えば、「先輩に就活相談をして企業を紹介してもらう」「合同イベントで偶然見かけた企業の話を聞いてみる」「研究室に来たOBOGから話を聞く」「友人や先輩との雑談」といったチャンネルの減少が予想され、「WEB経由で志望企業を見つける」手法の占める比率が大きくなるでしょう。
その結果、知名度の高い企業・人気企業を中心に受験する就活生が増えることが予想されます。さらにWEB説明会がその傾向を加速させる可能性があります。リアルな合同説明会であれば、参加人数に制限があったり日程の都合で参加が難しいというケースが少なくありませんが、WEB説明会ではこれらの制限がなく、多くの学生に参加機会が広がるからです。
また、「WEB就活への対応が難しい」という中小企業が少なくないという現実もあります。就職活動でWEBイベント/説明会、オンライン面接を行うためには機材の準備や一定のITリテラシーを有した人材が必要となります。実際、大手企業と中小企業ではWEB就活への導入で大きく差が出ているという調査結果も出ています。
これら背景から、大手・人気企業とそれ以外の企業における志望者数の偏りが一層加速すれば、就職活動の難易度は著しく高まるでしょう。志望企業を絞り込む際は、人気・有名企業だけでなく、幅広い視点で探していくことをおすすめします。
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