理系人材×BizTech(シンプレクス・ホールディングス株式会社 取締役副社長(共同COO) 助間 孝三)


PROFILE

助間 孝三

助間 孝三
シンプレクス・ホールディングス株式会社
取締役副社長(共同COO)
東京大学 理学部 数学科 卒

ビジネスの本質を見極め、テクノロジーで課題を解決する

シンプレクスは、FinTech(金融×IT)の領域で培ってきた強みを活かし、金融以外のあらゆる領域にソリューションを提供するBizTech(ビジネス×IT)へのシフトを推進しています。私たちの強みの本質は、「金融とITを熟知している」という点ではありません。これまで私たちが手掛けてきたのは、コスト削減が目的の業務システムではなく、ディーリングに代表される金融機関のコア業務を支えるシステムです。私たちはクライアントの事業の本質を捉え、高度な金融工学を駆使しながら、短いレイテンシ(通信の遅延時間)などの厳しい要件をクリアするシステムを作り上げてきました。

従来の主力フィールドは金融領域でしたが、ビジネスの本質を見極めてテクノロジーで課題を解決するという能力には汎用性があります。BizTechの事例として、私たちが保険会社に常駐し、数年をかけて業務理解を十分に深めた上で業務システムを開発した例もあります。また、その際の知見を活かし、異業種のクライアントが保険会社を新設する際の業務設計を支援した事例もあります。

変革の実現には、戦略から実行まで一気通貫でやり抜くこと

昨今はあらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が頻繁に叫ばれていますが、金融業界は元来より膨大なデータを扱うビジネスなので、他業界に先行してIT投資が行われてきました。そのため、金融業界は技術的にも先端を走っていましたが、近年は様々な業界でもデジタル化が急速に進み、いずれはすべての産業がデジタル化していくでしょう。

DXにおいて重要なことは、上流の戦略を描くだけではなく、下流の実行まで踏み込むことです。今や戦略系のコンサルティングファームもITの部隊を組成し、実行フェーズにまで手を伸ばしてきています。その点、シンプレクスには戦略から設計、開発、運用保守までを一気通貫で行ってきたという強みがあります。今後もDXが加速していく中で、「業務を変革する」というゴールまでやりきる姿勢はますます重要になっていくと考えます。

ビジネスでは解のない状況に遭遇することも多い

私は学生時代、数学科に所属してロジックで正解を追求するという学問に打ち込んできました。学問の領域で一定の達成感を得た後、次は理系として培ったロジカルシンキングを武器にビジネスに挑戦したいと考えていましたが、数学のようにロジックだけで答えが出る世界ではないことは理解していました。ビジネスではロジカルシンキングだけで意思決定できない状況や、正解が複数ある状況、あるいは解が存在しない状況にも遭遇するだろうと想像していたのです。

それならば、ビジネスにおいては個人の経験や価値観にもとづく感性的な意思決定もロジカルシンキングと並ぶくらい重要な要素になるでしょう。つまりロジックと感性の両方を備えたハイブリッドな人材こそが高い価値を提供できるという仮説を立てたのです。

理系的素養を土台に、ハイブリッド人材を目指せ

ビジネスの世界で、私は割り切れない状況で悩みながら決断するような状況を何度も経験し、仮説が間違っていなかったと確信しました。そして現在、シンプレクスで活躍する社員に目を向けてみても、やはりロジックと感性のバランスが取れたハイブリッドな人材が大半です。そのバランスは人によって様々ですが、ロジックと感性、そのどちらも高い次元で両立させるのは、けっして不可能ではないと感じています。

理系学生の場合、ロジカルシンキングは理系的素養のひとつであることから、スタートラインで多少のアドバンテージがあることは事実です。ただし、自分の能力を妄信してはいけません。自分自身のパラメータを客観視して、後天的に自分を変えていくことも理系的な姿のはずです。理系学生がこれからビジネスパーソンとして高みを目指すならば、ロジック以外の面にも意識を向けて、ハイブリッドな人材を目指してほしいと思います。