コロナウイルス 就活への影響


2020年1月、中国武漢で感染が拡大したコロナウイルス(新型肺炎)は、世界各国に拡散し、感染者は連日増加の一途をたどっています。日本国内においてもコロナ感染者の増加が続いており、経済活動などへの影響が徐々に出始めていますが、就職活動も例外ではありません。コロナウイルス感染者の増加によって22卒および23卒の就職活動にどのような影響が生じるのか、不安を抱いている就活生も少なくないかと思います。コロナによる就活への影響、そのリスクと対策を解説します。(2021/1/13更新)


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就職活動におけるコロナウイルス感染症の影響リスクと対策

【1】企業説明会・インターンシップの中止

新型コロナウイルス感染者の増加を受け、一部の企業はリモートワーク(在宅勤務)や時差出勤の導入を始めました。これに関連して、21卒および22卒の就職活動における選考活動では説明会や面接、インターンシップを中止・延期を決定する企業が多数でました。ソニーは2020年2月中旬に東京都品川区で開催予定だった就活生向け企業説明イベントを、日本生命やカルビーも2月開催予定だったインターンシップの中止を決定。その後も多くの企業が連日、説明会やインターン中止を決定しています。

さらに2020年の夏季に実施される22卒対象のサマーインターンシップにおいては、オリンピック開催の影響で実施件数の減少が予定されていました。それに加え、コロナウイルスの状況が早期に改善しなければ、21卒の就職活動が長期化する可能性が出てきており、今夏に予定されている22卒向けインターンシップ実施への影響も懸念されます。

このまま企業説明会やインターンシップの中止・規模縮小といった流れが続けば、就活生の企業受験(接点)の機会損失は看過できない事態となるでしょう。その対策として、インターネット上でオンライン面接(WEB面接)やオンライン説明会を実施する企業が増えています。22卒サマーインターンシップ(2020年夏実施)についてもオンライン(WEB)でのコンテンツ提供に切り替え、プログラム検討を始めている企業も出ています。インターンシップといえば、現地でのリアルな就業体験が従来のスタイルですが、今後の新型コロナウイルス感染拡大状況によっては、その在り方が大きく変化する可能性が高まっています。就活生は、WEB面接やオンライン説明会を活用することで、企業との接点を減らさないよう努めましょう。

【2】就活イベント/合同説明会の延期・中止

2021年卒の就活生を対象に、2020年3月から大規模イベントが連日予定されていましたが、リクルートは「4月末までの合同企業説明会をすべて中止」、マイナビも「4月中に予定されていた合同企業説明会の中止・延期を決定」と発表しました。その他にも就活以外の大規模イベントが中止となるケースも相次いでいます。アジア最大級のカメラの展示会『CP+』(2/27~ パシフィコ横浜)、国技館5000人の第九コンサート(2/23)、センバツ高校野球大会(3/19甲子園)など参加者が多数集うイベントの中止が決定し、東京都や大阪府は主催の大規模なイベント・集会を当面の期間すべて延期・中止すると発表しています。さらに3月24日には東京オリンピック・パラリンピックの2021年への開催延期が発表されました。

東京都は3月25日の緊急会見で「不要不急の外出自粛」を呼びかけ、少なくとも都主催の大規模イベントを延期や中止とする措置を取る来月12日までは、平日を含めて続けることを決定しています。現時点では開催予定となっている就活イベント中止の可能性も非常に高くなっているため、就活イベントの参加を予定している方は最新情報をしっかりチェックしましょう。
≪5/16追記≫
4月7日に政府対策本部は、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡を対象地域対象に新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を行いました。これにより対象地域の住民は5月6日まで、「人との接触を7~8割削減することを目指して、外出を自粛」するよう要請されています。さらに4月16日には緊急事態宣言の対象をこれまでの7都府県から全国に拡大。今後のコロナウイルス感染拡大状況にもよりますが、就活関連のイベントや合同会社説明会の再開検討は7月以降となるでしょう。リクナビおよびマイナビは6月中に開催が予定していた新卒学生向け合同企業説明会・イベントの中止を決定しています。

【3】企業選考プロセスの変更・再検討

多くの企業がコロナウイルス感染症の影響を考慮して、直近の単独企業説明会や面接の中止・延期を発表しています。企業側も、今後の選考プロセスにおいて、いつ、何を実施すべきか再検討を行っているのが現状です。説明会については、一部企業においてはオンライン説明会での実施を決定していますが、オンライン環境を整えられない企業も少なくないでしょう。面接については、一次面接など早期の選考プロセスについてはWEB面接で実施し、最終面接など後半の選考はリアルの場で行うケースもあるようです。筆記選考は以前からオンラインで実施している企業も多いですが、グループディスカッションなど複数の学生を集めた選考プロセスは中止となる可能性が高いでしょう。さらに、22卒インターンシップについても一部の企業ではオンラインでのプログラム提供を検討しています。いずれにしろ、選考スケジュールや、プロセスは当初の予定から大きく変更を余儀なくされています。今年の就職活動では企業とのリアル接点の減少は避けられず、情報収集、企業接点などは例年以上に自主的に行動を起こしていくことが重要となるでしょう。

【4】中長期的な日本経済および企業業績への影響

コロナウイルスの蔓延によって、すでに企業経営において中国工場の操業停止によるサプライチェーン停滞(資材・部品調達や流通への影響)、インバウンド(訪日観光客)激減、大規模イベントの中止といった影響が出ています。新型肺炎が企業業績や国内景気にどの程度の影響を及ぼすか、NHKが実施した法人向けアンケートでは45%の企業が“新型ウイルスの影響で業績が悪化する”と回答しています(2/17 NHKニュース)。

さらに心配なのは、そもそもの景気基調で弱含みの要素が出てきている点です。2019年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.8%減、年率換算では7.1%減と、5四半期ぶりにマイナスとなっており、コロナウイルスの影響が出る以前から、厳しい数字となっています。近年、好調といわれてきた学生の就職環境ですが、今後の動向を注視していく必要があります。世界経済や志望業界の景気動向をしっかりチェックしていきましょう。

≪5/20追記≫
4/17時点で新型コロナウイルスの影響を受けた経営破綻が全国で66件あることが明らかになりました(東京商工リサーチ調べ)。当該企業は観光、サービス、食品メーカーなど複数業種にわたっており、様々な業態、また全国各地で企業経営に大きな影響が出ているとみられます。その他、企業においても今回のコロナ感染拡大の影響を調査した結果、「すでに経営に影響が出ている」と回答した企業は62.5%、「今後影響が出る可能性がある」は34.8%で、合計97.3%の企業が経営において何らかの「影響がある」と答えています(第3回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査 東京商工リサーチ調べ4/2)。コロナウイルス感染症拡大による影響が大きい航空業界では、ANAグループが21卒新入社員採用(グループ37社合計で約3200人規模)を一時中断すると発表。JALおよびスカイマークも、2021年度入社の新卒採用活動の中断を発表しています。その他の企業においても今後の業績動向によっては採用計画への影響は避けられないでしょう。 さらに、20卒学生(2020年4月入社予定)の就職内定の取り消しが出ており、厚生労働省は4月2日時点で56人が新型コロナウイルスによる経営悪化などによって内定が取り消された事例を把握しているとのことです。「新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化し採用することができない」という内定取り消し連絡を受けたという20卒就活生が出ているようです。もし内定取り消しをされた学生はすぐに大学の就職課や信頼できる教授に相談してください。企業への対応アドバイスや、欠員が出てまだ募集を継続している求人を紹介してもらえる可能性があります。また、コロナウイルス関連で内定取り消しを受けた学生を対象にした採用を実施する企業の動きも出ているので、諦めず情報収集をしてください。

≪12/15追記≫ 2021年7月の景気動向指数に基づく景気判断は、12カ月連続で「悪化」となり、リーマン危機前後の11カ月を上回って過去最長を更新しました。その後一旦持ち直したものの、感染拡大状況の悪化に伴い、景気動向は今後も予断を許しません。新型コロナの影響による企業倒産は12月時点で800社を超えており(帝国データバンク調べ)、コロナ関連の解雇も7.6万人に及ぶ(厚生労働省調べ)と報道されています。飲食、観光宿泊だけでなく、建設、メーカーなど様々な業種が厳しい状況に直面しています。
就活市場への影響も大きく、コロナ禍の緊急事態宣言下での就活を余儀なくされた21卒の大学就職内定率(2020年10月1日時点)は69.8%と昨年同期比で7ポイントの下落。この下落幅はリーマンショック時(2009卒)の7.4ポイント下落に次ぐ過去2番目の大きさとなっています。近年は比較的堅調だった就活市場でしたが、新型コロナの影響で業績が悪化した企業が採用抑制に動いたことに加え、春先の面接/合同説明会の中止といった混乱が大きく影響していると見られます。

≪現在の状況下で就活生はどう動くべきか≫

まず何よりも優先しなければいけないのは「自身が感染しないよう万全を期す」ことです。もし、就職活動がピークとなる時期にコロナウイルスに感染した場合、数週間の休養を余儀なくされる可能性があります。基本的な予防行動はもとより、不特定多数の人が集まる場所はなるべく避けるなど、体調管理に留意しましょう。

昨今の状況下では説明会・イベント・インターンシップの実施は少なくなるかもしれませんが、企業側もオンライン対応やスケジュール調整でできる限り柔軟な対応をするべく尽力しています。オンラインの取り組みを始める企業は今後もさらに増えていくと思われるので、諦めずにしっかり各企業が発信する情報をチェックしていきましょう。就活のオンラインWEB化の流れは強まっていくと予測されますが、就活生側もそれに対応するためにインターネット環境の整備が急務となります。WEB面接やオンライン説明会が多くなっていけば、インターネットの通信量が増大するため「使い放題」の回線、および通信安定性の高い回線を用意する必要性が高まります。重要なタイミングで通信制限がかかったり、貧弱な電波状況ではオンラインでの動画通信に耐えられません。

また、現時点ではコロナ感染拡大の終息時期が見通せず、企業業績への打撃が広がり続けています。そのため、企業が採用計画の見直し、凍結に着手する可能性も高まっています。就活生はリスクヘッジのために例年よりも多くの企業にエントリーしておくことを推奨します。

そして、今回の就職活動では、「企業とのリアル接点が減る」ことはほぼ確定的です。これはすなわち、「企業研究の難易度が上がる」ことに直結します。なぜなら、実際に各社の社員と会って話を聞くことで得られる情報は、WEB記事や書籍などから得られない情報も少なくないからです。「人柄や社風といった言語化が難しい情報」や「対面でなければ話しにくい情報」があるということを前提に、今できる情報収集・会社研究に取り組んでください。

≪感染対策の詳細/厚生労働省HP≫

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