システムインテグレーター

顧客企業に対して情報システムのコンサルテーション・設計・構築・運用などを手掛けるシステムインテグレーター(SIer)。法人向けのビジネスモデルということもあり、具体的にITを通じてどんな社会貢献ができるのか、その中でどんな業務が行われているのかなかなかイメージできないという方も少なくないだろう。SIerのビジネスモデルやその中の仕事について、国内でもトップクラスの技術力を有する新日鉄住金ソリューションズの執行役員 玉置和彦氏から話を聞いた。

ITの重要性が高まり続けるビジネス現場で、業務効率化にとどまらない新しい価値を提供する


玉置 和彦(たまおき・かずひこ)

メーカー、金融、流通、サービスなど、日本を支える様々な分野の企業には情報システムが導入されており、各社の現場業務や経営判断などに活用されています。ビジネス環境が目まぐるしく変化する昨今、ITの重要性はますます高まっており、システムの差が企業の競争力に直結するといっても過言ではありません。メーカーを例に挙げると、製品設計のプロセスやサプライチェーンなど企業のあらゆる領域でITが導入されており、設計品質や歩留まりの向上、需給予測に基づいた精度の高い在庫管理などが実現可能となり、企業の開発力やコスト競争力強化につながっているのです。その他にもさまざまな領域でITは活用されており、当社が手掛けた一風変わったプロジェクトでいえば、Jリーグの試合日程を自動作成するシステムや新幹線のダイヤグラム編成システムなどもあります。SIerを一言でいえば、「顧客企業に対し付加価値の高いシステムを作り上げることで様々な課題を解決する企業」といえるでしょう。

SIer各社の強みや違いは学生の皆さんには伝わりづらいかもしれませんが、企業によって得意なフェーズや技術領域、お客様の業界などその特長は多種多様です。システムを作り上げるためには、経営戦略・情報システムに関するコンサルティング、ソリューションの提案、ソリューションを実現するシステムの設計・開発、システムの保守・運用などのフェーズが存在します。この流れ全体をシステムライフサイクルといいますが、当社は全てのフェーズを実行できるSIerの1つです。数あるSIerの中からお客様は、「自社の実務に対する理解度はどうか」、「プロジェクトの規模に応じた開発体制を構築できるか」、「信頼できるパートナーとなりうるか」「実行する技術力があるか」といった評価基準で依頼先を検討します。

学生の皆さんが就職先としてSIerを検討する際に、職場の働きやすさや事業モデルの将来性などを見る方が多いのではないでしょうか。その他にはエンジニアとしてのキャリアパスの可能性などもあるかもしれません。私はSIerを見る際に、“人”を見ることをおすすめします。先輩社員の姿を通して、会社の文化や価値観など感じられることは非常に多いからです。SIerという業態は設備がなく、“人”が資本。競争力の高いSIerは社員を大切にし、育成にも力を入れていますから、魅力的な人材が多い会社を見つけてみてください。

激変する経済環境の下、SIerのビジネスモデルも労働集約、受託開発型から知的集約、サービス提供型への転換といった大きな変化が求められています。いままでのITは“業務効率化”が大きなテーマでしたが、今後は“新しい価値の提供”が求められていくでしょう。例えば、ベテランの職人が減少している製造業の現場ではノウハウの継承や人手不足といった問題がありますが、その解決策の一案として、当社はメガネ型ウェアラブルデバイスを採用したシステムの研究・実用化に取り組んでいます。今話題になっている“ビッグデータ”の活用に関しても、企業経営に対する新しい価値の提供といえるでしょう。指示通りのシステムを構築するのではなく、知恵を絞って顧客企業や産業の競争力を高めていく、そんな面白さがこれからのSIerにはあると感じています。

テクノロジーの最先端に触れ、それを用いて実用的なシステム構築することでお客様の現場や経営を変革していく――そんな働き方に興味を持っている方は、将来の活躍フィールドとしてSIerを検討してみてください。

新日鉄住金ソリューションズ株式会社
執行役員
産業・流通ソリューション事業本部 流通・サービスソリューション事業部長
玉置 和彦(たまおき・かずひこ)